2000年の社会福祉基礎構造改革と介護保険制度の創設があいまって、それまで官又は社会福祉法人の専売特許だった介護事業の規制緩和が行われ、民間の事業参入が進められました。その結果、「保険あってサービスなし」と危惧された介護保険制度が社会に定着することになります。その後、社会福祉法人による不祥事を契機にイコールフッティングの議論が起こりました。非課税優遇を受けている社会福祉法人と課税原則の民間が同じ土俵で事業展開するのはフェアではないというもの。関係者による喧々諤々の議論を経て、非課税は継続するが、社会福祉法人はもっと地域の福祉に貢献しなさいという趣旨の「地域公益事業(活動)」が法律で責務化されることになり、今年で6年目を迎えています。
少し前置きが長くなりましたが、国から言われるまでもなく、当法人では設立以来「地域立」社会福祉法人の矜持を持って「福祉でまちづくり」を合言葉に積極的に地域福祉活動に取り組んできました。そして、以前にも本コラムで触れましたが、いよいよ新たな地域公益事業として「ひとり暮らし高齢者等安心生活アシスト事業」(アシスト事業)を来年1月から本格稼働させることになりました。狭あい道路ひしめく密集市街地で、老朽狭小住宅に住まうフレイルな「低所得単身男性高齢者」の抱える困りごとをいかに解決していくか。法人設立以前からそんな問題意識をもって様々な活動を進めてきたのですが、アシスト事業はその課題解決に向けた今日的な到達点であり、新たな出発点になるのではないかと感じています。ストレッチ性も高く、ぜひ法人の基幹事業に成長させていきたいところです。
相談支援、地域活動支援、生活不安対応支援、エンディング支援の4つの機能でアシスト事業は構成されています。当法人が直接実施するものと既存の施策を活用して進めていくものに分かれていて、介護や医療以外で、現段階で約20種類のアシストメニューが準備されています。元気なうちは働きたいに応える生きがい就労支援や「やってあげる、やってもらうではなく、やっていこう」の精神を大切した互助活動の組織化、居住支援や孤独死ゼロのまちをめざす電球活用型の見守り支援も予定されています。エンディング支援では、改葬含め、ニーズによっては地域合葬墓を整備しようかと思案中です。
西成区は、人口激減が続いています。高齢化率や単身高齢者世帯率、生活保護率や要介護認定率は大阪市内でトップという状況です。しかも男女とも日本一平均寿命が短いという厳しい環境に置かれています。西成区の現状はいずれ日本が直面するであろう困難の先取りであり縮図です。そんな西成における地域公益とは何か。この難題解決に挑戦を続ける決意ですし、そのこと抜きに西成における地域包括支援システムは実現できっこありません。とは言え、将来が楽しみなアシスト事業も先立つものが乏しいので、みなさまの物心両面の絶大なアシスト(参加)があればいいなぁと願う今日この頃です。