福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

希望はアセスメントできません

 今月3日、国の社会保障審議会障害者部会が開催され「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて(中間整理(案))」が公表されました。突っ込みどころ満載の整理案なのですが、構造的なものから実務的なものまで幅広い内容となっています。例えば、障害児支援では、その役割・機能の観点から「総合支援型」と「特定プログラム特化型」に区分したサービス体系を整備し、さらに支援時間の長短も評価するという内容が盛り込まれています。また、居住支援では、グループホームに一人暮らしに向けた通過型ともいうべき新たなサービス類型を設けるといった方針も盛り込まれています。

 特に私が関心をもったのは就労支援の分野です。現行の就労系福祉サービスには就労継続支援B型とA型、移行支援の3種類あるのですが、利用希望者にとってどのサービス類型がふさわしいかを事前にチェックする「就労アセスメント(ニーズの把握と就労能力や適性の評価)」を制度化するというのです。背景には「障害者の就労能力や一般就労の可能性について、障害者本人や障害者を支援する者が十分に把握できておらず、適切なサービス等に繋げられていない」という問題意識があるようです。就労アセスメントは、相談を通じた情報収集に加え、作業場面等を活用した状況把握、多機関連携によるケース会議などを通じて行われ、その後、サービス利用計画を作成する流れを想定しているようです。

 一般論として、すべての人は自分の職業能力と適性を理解し、自分の特性に合った職業選択を進めていくことは重要です。企業も能力と適性を基準に採否を判断することが社会的要求となっているので、就労系福祉サービスでも個々の障害特性にあった的確なアセスメントが行われることは重要だと思います。しかし今回の懸念は、就労アセスメントが介護保険の要介護認定→ケアプランのようなサービス類型として創設され、支給決定プロセスに位置づけられようとしている点なのです。こうなると、いくら障害者本人が就労訓練を受けたいと願っても、アセスメントの結果、あなたは訓練にはなじまないので利用できませんという措置が可能になってしまいます。労働政策審議会障害者雇用分科会でも「本人の就労能力や適性、可能性を一方的に決めつけたり、特定のサービス等への振り分けを行ったりするものにならないよう留意する」と注意喚起されていますが、就労アセスメントを支給決定のプロセスに盛り込むのなら、障害者が希望しても制度が利用できないという異常事態が当然起こりうるのです。

 国資料によると就労系福祉サービスの利用者は37.5万人。毎年、特別支援学校を卒業する障害者(約2.2万人)の約3割は一般就労で、約3割は就労系福祉サービスに移行しているようです。働きたいと願う多くの障害者の就労訓練の希望を摘んでほしくはありませんし、そもそも希望はアセスメントできません。何とか軌道修正し、支給決定プロセスから分離してほしいと願う年の瀬となりました。