新年度が始まりました。今年は当法人が運営する障害者会館の設立から30年の節目を迎えます。設立当時は、車いすで街を移動するだけでジロジロみられる時代でした。障害児が学校でいじめられ、重度障害者は施設に入所していました。そんな悲しいことを生み出す社会を少しでも変えていこうと、さまざまな福祉活動が住民自身の手で進められ、その成果のたま物として障害者会館は誕生しました。会館設立の立役者は地元の障害児の保護者達でした。多くの地域住民や行政にもお世話になりました。
あれから30年。紆余曲折を経て今日を迎えたわけですが、今号では当時の活動を振り返りつつ今日との質や量の違いを評価(⤴⤴や⤵⤵)しながら今後の進むべき方向を考えてみたいと思います。枠組みとしては、当時も今も私自身が常に問題意識においているソーシャルワーク技法に沿って進めます。ソーシャルワークには7つの技法があり、これは今でも社会福祉の分野では基本となる枠組みです。7つの技法とは、①ケースワーク、②グループワーク、③コミュニティワーク(コミュニティオーガニゼーション)、④ソーシャルリサーチ、⑤ソーシャルアドミニストレーション、⑥ソーシャルアクション、⑦ソーシャルプランニング。カタカナばかりですが、これに沿って30年を振り返りたいと思います。
まず、①ケースワークは、相談を軸とした個別支援で、当時と比べると今は⤴⤴していると思います。②グループグループワークは集団援助で、やや⤵⤵傾向だと感じます。③コミュニティワーク(コミュニティオーガニゼーション)は、主に地域組織化活動で、今は⤵⤵になっていると思います。④ソーシャルリサーチは社会調査で、地域の福祉ニーズ把握などを指しますが、今は⤵⤵⤵⤵になっている気がします。⑤ソーシャルアドミニストレーションは福祉施設・事業管理で、これは⤴⤴⤴⤴。一番大きく前進した分野だと思います。⑥ソーシャルアクションは社会運動で、こちらは⤵⤵⤵⤵だと思います。時代背景もあるかもしれませんが少し寂しい感じがします。最後は、⑦ソーシャルプランニング。いわゆる社会福祉計画です。西成風に言えばまちづくり計画となるのかもしれません。こちらは⤵⤵になっていると思います。
これらの評価は、独断なので間違っているかもしれません。大切なことは、今日の情勢や時代背景をみながらしっかりと議論を深め、当時と今とを比較・検証し、過不足を整理して今後の方向づくりを考えることです。評価はいわば私が口火をきった「ソーシャルワーク今昔物語(西成区北西部編)」だとご理解いただいて、関係者の熱心な議論や内外のご意見を期待しています。合わせて30年の節目にあたり、よくここまでこれたなぁと思うし、みんなよくがんばってくれているなぁとしみじみ感じつつ改めて関係者の奮闘に敬意を表したいと思います。ジロジロみられず、いじめられず、誰もがその人らしく暮らしていける地域社会をつくる。やっぱりキーワードは法人スローガンの福祉でまちづくりです。