福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

未曽有の介護人材不足をどう乗り越えるか

 2025年、団塊の世代が75歳以上となり2055年頃までは介護需要が増え高止まりします。一方、労働力人口の減少は続くので介護を担う人材は大量に不足します。国も他業種からの転職促進や潜在有資格者の掘り起こし、シルバーパワーや外国人労働者の活用など様々な方法で人材確保に乗り出しています。介護労働者の処遇改善も少し進みましたが実に中途半端なこともあり、いまのところ人材確保の目途はたっていません。2025年問題の1つでもある介護人材の不足解消。難問中の難問です。

 そこで提案です。いろいろなご意見やご批判がでるかもしれませんが、私は思い切ってご家族の力を借りるほかない気がするのです。そう、2000年の介護保険創設時に見送られた家族介護手当(介護給付の6割程度の現金支給)を創設し、現状、アンペイドワークとなっている無数の家族介護を社会的に評価し、活用させてもらおうということです。ただし、あくまでこれは臨時・特別の暫定措置とし、家族に介護の負担が固定化しないようにします。言わば30年間を乗り切る苦渋の選択です。ちなみに家族介護手当を導入しているドイツでは、介護する家族が元気な間は介護給付より家族介護手当が選ばれたそうですが、時間の経過とともに介護者も高齢化・虚弱化し、体調も悪くなる一方、家族の介護力を行政が判定する仕組みを加えるなどすれば、自然と他人介護(介護給付)に変更されていくケースも少なくないようです。日本でも家族介護手当=介護の固定化にならないよう工夫を加えます。

 さらに、年間10万人から7万人に減少したとはいえ未だ深刻な課題となっている介護離職対策の抜本強化を行います。現在、介護休業制度はわずか90日程度(賃金の7割弱の給付金支給)なので離職が起こって当然です。介護は平均7~10年は続きます。ここをしっかり支えることができる制度でかつ復職も容易となる新たな制度が必要なのです。具体的には介護離職された方には、先の家族介護手当に加えて特別失業手当を支給し(長期失業補償制度の創設)、結果として勤務時代とかわらない給与を手当するイメージです。介護終了後はスムーズに復職できるよう労働環境を整えます。本来なら介護を理由に仕事を辞めなくてもいいよう介護制度を充実させることが先決ですが、現実は、制度の根幹である介護人材の不足が解消する見通しはありません。全体としては、家族のいる方はご家族の介護力に期待し(家族介護手当)、単身高齢者には現行の他人介護(介護の現物給付)を優先させます。どうでしょう。介護サービスの品質が低下するなどいろいろご意見・ご批判はあると思います。しかし、未曽有の介護人材不足を何としても乗り切るほかありません。決して介護難民を生み出さない、これが私の基本だからです。むろん2055年以降は、少子化、生涯未婚率の上昇も踏まえた介護の社会化を実現する制度の抜本改革が必須です。介護人材の不足。さて、あなたならどんな処方箋を描きますか?