福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

共に生きるを探求し続ける

 分離は差別だ。古くは障害児の養護学校義務化反対運動のときに使われていたスローガンです。今も日本には特別支援学校・学級として障害児を分離する制度があり、先般も国連の障害者の権利に関する委員会から分離特別教育を廃止するよう強い要請を受けました。分離は差別であり、地域の普通学校への進学を保障し、インクルーシブ教育を深化させることはすでに国際標準になっているのです。

 一方、障害者雇用に関する分野はどうでしょう。日本は常用労働者43.5人以上の企業に、障害者を2.3%以上雇用するよう法律で義務付けています。しかしこれを遵守できている企業は未だ半数程度にとどまっています。法定雇用数が不足した場合、労働者100人以上の企業は不足した障害者1人につき月5万円の納付金を国に支払わなくてはなりません。さらに悪質な雇用率未達成企業は社名が公表される仕組みもあり、企業イメージを重視する会社ではこれを回避したいと考える所もあります。

 そんな中、障害者の雇用義務の丸投げというか外注というか、法定雇用率を金で売買するかのような雇用率達成代行ビジネスが注目をあび、急速に成長しています。関東からはじまり、今では大阪にも広がっています。障害をもつ人の保護者の中にはこれに賛同する方もいて、大手を含む多くの民間企業がこの代行ビジネスを活用して自社の法定雇用率をクリアーしていく動きが広がっているのです。また、この代行ビスネスを後押する自治体も増え始め、代行企業と協定書を結ぶ所まで出てきています。

 障害者が農業に従事するパターンが多いのですが、最近ではコーヒー豆の焙煎事業などにも広がっています。障害者の雇用契約自体は当該企業が行いますが、働く場所は代行業者が用意した農園です。企業は障害者へ賃金をはじめ、農園の賃料や農業機材の費用、代行企業へのコンサルティング料などを支払います。企業の担当者が農場現場へ派遣されるなど接点もあるようですが、障害者は企業本体とは無関係な仕事に就き、企業から分離された場所で働いています。収穫された農産物は社員食堂で使われたり、福利厚生として従業員に配布されていて、競争性のある市場や店舗への出荷は行われていません。

 私はこの障害者雇用代行ビジネスにえも言われぬ違和感を抱いています。はっきり言ってこれは居場所や安心などの美名に装飾された雇用における障害者の分離であり、差別だと思います。農園はまるで雇用版コロニーで、明らかに障害者施策の基本理念や雇用促進法の目的に反します。下手すると障害者雇用に東奔西走してきた先達企業の努力が水の泡になってしまいます。しかも自治体がこれに協力するなどは論外の愚行。もしかすると今の特例子会社制度が誤解を与えているのかもしれません。要検証です。法定雇用率さえクリアーできればこと足れり、とでもいうようないびつな障害者雇用が一日も早く軌道修正され、真に共生社会を展望しうる障害者雇用推進社会を創造していかなくてはなりません。