古くは「シエンピ」。厚生労働省の障害者施策ではよく略語が使われるのですが、シエンピもその一つ。障害者福祉サービスに関する支援費制度のことを指します。今は制度がないのでこの略語はあまり使われていませんが、当時からシエン「ヒ」ではなく、シエン「ピ」と半濁音でした。一般に「イリョウピ」だとか「(セイカツ)ホゴピ」などとは言わないのに、なぜか「ピ」でした。不思議です。次は「シュウポツ」。これは今も使われている現役の略語です。「障害者就業・生活支援センター」のことです。「・」がポツです。正式名称は長いので私もシュウポツをよく使います。そして、最近では「ニモホウカツ」です。知る人ぞ知る「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム」の略語です。
この「ニモホウカツ」の構築に向けては介護、住まい、就労、啓発など多くの課題があります。中でも厚い壁なのが精神科病院への入院をめぐる諸問題で、その解決に向けた検討が3月から本格化し、秋の法改正をめざして議論が行われています。なかなかいい論点が設定されていて私も注目しています。例えば「意思表明支援」の制度化。入院中の精神障害者の意思表明をアシストするもので、病院から独立した外部からコミットメントさせ、患者の権利等の情報提供を行いながら、入院加療に関する本人の考えや希望を病院側に伝えるお手伝いや退院促進施策を利用するための準備等が想定されています。
障害者権利条約の観点からも問題ありと指摘されている「医療保護入院制度」の廃止・縮小を視野に入れた取り組みも論点になっています。非自発的入院にあたる医療保護入院は、戦前の「私宅監置」と同様、人間の尊厳を踏みにじる大きな課題を抱えた制度です。有期限性の導入など任意入院への早期移行、家族同意や市長同意のあり方など論点は様々です。この他、病院内における隔離・身体拘束の最小化、虐待の防止、むろん退院後支援施策の充実も論点として設定されています。日本は世界に名だたる精神科ベッド大量保有国です。なぜ、いつからそうなったのは知りませんが異様です。一日も早く入院中心の医療制度を見直し、例えばイタリアのように地域を基盤とした支援体制の構築が必要です。
ところで「精神障害者にも対応した地域包括…」とネーミングした厚生労働省の担当者の問題意識はどこにあったのでしょうか。「にも」という語感からは、高齢者が中心の今の地域包括ケアシステムに対するツッコミや対抗意識、逆に懇願も感じます。あるいは単純に精神障害者に対する人権意識の低さか。はたまた予算獲得上の戦略なのか…。もとより、精神障害者を含む「全ての人がその人らしく生きられる地域包括サポートシステム」の構築こそが当法人がめざす地域共生社会実現の一里塚です。なので、これからは「ゼンホウカツ」という略語でも造語して地域で流行らせていきたいものです。