福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

ベストを尽くして二兎を追う

 2022年4月からアメーバ経営に取り組もうと準備しています。背景には、当法人の財務状況が良くない、悪化しているという危機意識もありますが、本質的には、新型コロナなど事業環境に不測の事態が起こっても常に経営の安定が保たれるようなレジリエンス力を備えたいと考えたからです。アメーバ経営とは、法人ミッションの実現やサービスの品質向上と財務改善の二兎を追う手法で、京セラの稲盛和夫さんが開発者です。事業・組織をアメーバユニットという小さな単位に分け、ユニットごとに独立採算をめざします。人材育成も企図しながら各ユニットにリーダーを配置し、いわば社長として独立採算実現に向けたパフォーマンスを発揮してもらいます。職員はユニット目標の達成に向けて各自の役割を担い、主体性を発揮して取り組みを進めます。なので「全員参加経営」とも呼ばれています。

 またアメーバ経営は、私がかねてから訴えていた付加価値重視型経営の考え方に近いこともあって導入を決めました。一般に組織の存在意義や事業の成長、利用者や地域への貢献度といったことを評価する財務的な指標は売上高や利益率です。付加価値重視とは、ここに付加価値という指標を組み合わせて経営の品質アップをめざすものです。付加価値とはいわば法人GDPです。売上から経費(人件費を除く)を差し引いて算出します(結果は「人件費+利益」と同じ)。付加価値が上がるということは、法人事業が住民ニーズに呼応し、組織が成長している状態を示します。考え方は、事業によって生みだされた付加価値を従業員(人件費)と事業所(利益)双方に分配するイメージで、付加価値が上がれば双方にとってプラスとなります。ちなみに付加価値から従業員へ分配した比率を労働分配率といいます。

 アメーバ経営の実務的な管理指標は「時間当たり採算」です。アメーバユニットごとに付加価値を計算し、それをユニット従業員の総労働時間で割り、1時間当たりの付加価値を出します。当法人では現在約50のアメーバユニットを設定しており、50ユニットそれぞれに時間当たり採算(成果)が可視化されます。時間当たり採算をアップさせる方法は、①売上を上げる、②経費(人件費除く)を縮減する、③残業などの労働時間を縮減する、の3つです。①~③のそれぞれの視点から計画をたて改善に取り組みます。例えば、老人ホームなどで取り組まれている「おむつゼロ」の実践は、排せつケアの品質向上だけでなく、おむつ関連経費の縮減という効果も作り出すアメーバ経営の好事例の一つです。

 経営改善の取り組みは、時にミッションを見失ったり、サービスの品質を低下させたり、乱暴な人件費削減などが行われる場合があります。アメーバ経営は、そうした欠点を引き起こさないようしっかりと管理下におき、利用者満足の向上はもとより従業員、事業所それぞれの満足度をアップさせる三方よしをめざします。色々な苦労が予想されますが、地域満足度向上のために二兎を追いたいと思います。