福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

住まいは人権


 来月、「大阪府住宅まちづくり審議会居住安定確保計画推進部会」という長~い名前の部会が主催するテーマ別の会議に「専門家」という位置づけで参加することになりました。私は決して住宅まちづくりの専門家ではないのですが、府の担当部局から西成で取り組んでいる居住支援事業の取り組みを聞かせてほしいと依頼があったのです。これまでの西成の実践を通じて、感じている住まいの課題や行政施策等への意見を表明できるいい機会だと思い、言いたいことを言ってこようと参加を決めました。

 居住支援事業は、高齢者や障害者、低額所得者をはじめ、法律で住宅確保要配慮者と定義された人たちの住まいの確保や安定居住をサポートするもの。府は新たな「居住安定確保計画」を策定するために部会を設けて、テーマ別に検討を行うことにされているようです。テーマは、①高齢者、障がい者関係、②地域福祉、子育て、LGBT関係、③外国人・人権・その他、の3つに分けられていて、私は③の会議に参加する予定です。③には賃貸住宅における入居拒否への対応もテーマに含まれています。

 さっそく、現場の担当者に無理をお願いし、これまで西成で進めてきた居住支援の具体的なケーススタディを行い、府の「計画」に反映させてほしい課題や政策の整理に取り組みました。ケース事例は本当に多種多様で、同計画だけではカバーしきれない課題が山積しているのですが、その中から選りすぐって、現時点では次の6つの柱で提案しようと考えています。①住宅確保時に発生する費用問題への対応、②民間住宅オーナーの負担軽減、③公営住宅の積極活用と運用改善、④居住支援活動を円滑にするためのネットワークの構築、⑤入居差別をなくす条例の制定(禁止・規制・救済・啓発機能)、⑥ハンセン病療養所退所者の居住支援に関する事例の報告、です。少し欲張りすぎているかもしれません。

 6点の内容について詳細に触れる紙幅はありませんが、大きなポイントは、住宅確保要配慮者の居住支援を、民間住宅市場を舞台にして展開するのか、公営住宅を基盤に展開するのかという施策の基本方向やポジショニングを明確にすることだと思います。ここがあいまいだと各種の施策に矛盾や齟齬が起きたり、隙間ができたりするからです。民間ベースで進めるなら、上記⑤の入居差別をなくす条例の制定はマストな行政課題だと思います。合理的な理由のない入居拒否は差別であるということを、府民の総意として明確に発信することはあらゆる施策展開の出発点として必要だと思うのです。逆に、大阪は公営住宅が多いのでそこで責任をもつというなら、セーフティネット特例住宅のような専用住戸を別枠で設けるなど、アファーマティブアクションが支援現場の臨場にもマッチすると思います。是非、府政の立ち位置を明確にし、「住まいは甲斐性(自己責任)」の時代から「住まいは人権」の時代へと住宅政策をバージョンアップさせる大阪モデルとも言うべき「計画」を策定してほしいなぁと思います。