医療や介護、流通や小売り…。コロナ禍などの緊急事態であっても、市民の日常生活や社会生活を維持するためには止めることができない、そんな社会機能を担っている人たちが今、エッセンシャルワーカー(以下EW)と呼ばれ、多くの人たちから敬意や感謝のメッセージが発信されているそうです。
当法人もEWのはしくれです。今般のコロナ禍では感染症予防対策に努めつつ、法人内で感染が起こっても業務が継続できるよう、施設ごとに分離ケアやゾーニング計画などをまとめた感染症版の業務継続計画を作成しながら対応を進めています。コロナ関連支出が大幅に増える一方、コロナによる利用控え等によって事業高が減少し、法人財政を圧迫。急遽、運転資金の借り入れなども進めてきました。
今月初め、東京商工リサーチが発表したデータによると、12月2日までの老人福祉・介護事業分野の倒産件数は、介護保険が施行された2000年以降で最多を更新したようです。訪問介護とデイサービス事業が中心です。また、休業・廃業・解散した事業所件数も過去最多の見通しだというのです。介護報酬の相次ぐ削減、かねてからの人手不足に加え、現下のコロナ禍によって事業が回らず、あえなく倒産したり、事業意欲を喪失する経営者が増え、やむなく休・廃業等に踏み切っているのでしょう。
さらに足元では、ヘルパーの離職が増え続けています。西成も例外ではありません。もちろん雇止めもあるでしょうが、比較的出入り容易な登録型雇用が多いことも背景に、低賃金の中、リスクを冒してまでヘルパーを続ける必要はない。ここは一旦、退職し、コロナ禍が収まれば再就職すればいい。そう考えるヘルパーも少なくないと思います。介護支援プランを作るケアマネージャーも悲鳴を上げています。ヘルパーが激減し、プランが組めないのですから当然です。むろん、最大の被害者は高齢者ご本人ですが…。今、ヘルパーの有効求人倍率はなんと15倍。平均年齢も50台半ば。EWであるはずの介護が危機的状況なのに、国は、すでに処遇改善交付金を支給している、と木で鼻をくくる始末。
もう年の瀬ですが、今年は介護保険施行から20年を迎える節目の年。国は来年4月の報酬改定に向けた議論を進めています。品質向上を促す加算のあり方が議論の中心ですが、「保険あってサービスなし」という最悪の事態が進んでいるという危機意識が弱いのではないかと心配です。制度創設20年を機に、介護保険を非常事態にあっても継続可能な社会機能へとフルモデルチェンジさせる時です。そのためには被保険者を拡大し基本報酬を大幅増額する以外に道はないでしょう。政治にはそういった将来を見据えた骨太改革にリーダーシップを発揮してほしいところです。少子高齢、人口減少社会をひた走る日本。それを根底から支える介護保険体制の構築へと舵を切る。もうまったなしだと思うのです。