来月、2度目の住民投票が行われます。大阪市を廃止し4つの特別区を設置する都構想の是非を問うものです。協定書(都構想の設計図)をみると、介護保険は特別区でなく、原則、一部事務組合に移すとのこと。ヤバイです。少なくとも3つのネジレが心配です。やや専門的で末節ですがお付き合を。
1つ目は、介護保険行政そのもののネジレです。協定書では、介護保険施策のうち、認定審査、地域包括ケアセンターや介護予防、生活支援型食事サービスや認知症高齢者見守りネットワークなどの業務を一部事務組合に移し、介護の事業者指定や実地指導、ケアプランチェックや介護保険施設の整備等は特別区に移すというのです。ニアイズベターというならこれ、逆ではないかと感じるのは私だけでしょうか。介護事業者の指定・指導等は、もともと都道府県の業務で、地方分権の一環として大阪市に移管されてきた経過から考えてもそうです。地域包括ケアセンターや食事サービス、認知症の人の見守り支援などは地域にどっぷり密着してナンボ。こちらを地域(特別区)に位置付けるのが常道でしょう。
2つ目は、国施策とのネジレです。国は、地域包括ケアシステムの構築に向け、医療・看護、介護・リハビリ、保健・予防、生活・福祉、住まい・住まい方等の各施策を地域ごとに包括的に整備していこうと旗を振っています。しかし協定書のように、介護や予防を地域(特別区)ではなく一部事務組合に移してしまうと、政策運営がバラバラになるなど明らかに国施策と逆行します。また、今の大阪市の高齢者施策は、高齢者福祉と介護保険とを一体的・総合的に運営し、双方の相乗効果が発揮されるよう計画されていますが、この建付けも崩れます。今後は、一方の高齢者福祉を特別区に、もう一方の介護保険を一部事務組合に移すのですから施策の股裂きが起こり、地域や現場での混乱が予想されます。
そして3つ目は、他の福祉関連施策とのネジレです。少なくとも、地域福祉や障害者施策等は、基本的には特別区(地域)に位置付けられることになります。これらは地域を舞台に、介護保険施策と一体的・総合的に取り組まれているので、この実践に支障がでる可能性は大きいと思います。調整役である市と区の社会福祉協議会もなくなるのです。地域共生サービスや虐待防止、成年後見や権利擁護などの施策も、介護保険と一体不可分なので、この司令塔を分離する制度設計は全くもってナンセンスです。
大阪市廃止の是非を問う住民投票、本コラムで触れるのはこれで3度目です。3つのネジレが示すことは、財源以前の問題として協定書(都構想)の制度設計が軽薄であり、中長期的には住民サービスが低下することは必定ということ。たぶん介護保険料の不公平回避に固執しすぎたのでしょう。決して今のままが良いということではありませんが、福祉推進の立場では、11月の住民投票で「反対」というほかありません。もちろん当法人のミッション実現や成長にとって合目的的な方針も「反対」です。