福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

長期戦を覚悟する

 この数ヶ月間、マスコミは連日連夜、新型コロナ報道を繰り返しています。その中に「医療現場は新型コロナと闘う最前線で、その努力をみんなで支えよう」という旨の報道があり、私はいつも違和感を覚えるのです。1つは「一番頑張っているのは患者さん本人だ」ということです。患者は自粛ルールを守らなかった不届き者で、自己責任だと断罪する差別・抑圧的な風潮を忖度してか、患者さんの正確な報道はあまり記憶がありません。医療関係者も粉骨砕身、たいへんご苦労されておられますが、患者・ご家族は、病苦に加え、忌避や排除、スティグマといった世の冷たさとも懸命に闘っておられます。

 もう1つは、医療現場が最前線という件です。確かに、患者さんを受け入れた医療現場は、未知の疫病と向き合い、ぎりぎりの努力を強いられ、リスペクトに値します。しかし同時に、新型コロナの重症や死亡例は高齢者に集中しており、その高齢者への感染を水際で懸命に防いでいるのは特養や老健、デイやヘルパーなどの多数の介護現場であるということを知ってほしいのです。リスクレベルは違いますが、新型コロナの最前線は介護現場、医療現場は最後の砦という見立てが適切ではないでしょうか。もし、ウイルスが介護現場を突破していたら、医療現場はもっとパニックになっていたかもしれません。

 さて今後、新型コロナはどうなっていくのか。中長期的には5つのシナリオが考えられています。①治療薬の確立で感染後のリスクが低下、②ワクチンの開発で感染自体のリスクが低下、③人口が集団免疫を獲得し鎮静化、④インフルエンザと同様、季節と共に一旦収束、⑤未知の要因により感染が収束。いずれも収束はすれど終息はしません。欧米に比べ、日本や東アジアではなぜ感染者や死亡者が少ないのか。それがわかれば6つ目のシナリオが出てくる可能性ありです。でも時間がかかるので、一日も早く①の状態になることを願うばかり。むろん①になっても予防対策は続きます。感染者の8割は軽症ですが、私たちは日々重症化しやすい高齢者をアシストしているので、引続き高い緊張感が必要です。

 ウイルス対策にゼロリスクなどありえず、かつ介護現場は休業がないエッセンシャルワークです。今後は感染リスクと感染を避けることによるリスクのバランスをみながらリスクテイクすることが必要です。引続き予防対策は徹底しますが、もし感染しても発症させない、発症しても重症化・集団化させない、重症化しても命は守る。こうした多段階で総合的なレジリエンスを確立することが、ウイズコロナの組織づくりにつながる。そんな気持ちで、当法人では「新しい生活様式」をモジって、新しい業務様式「ヒューマン・ニューノーマル」を6月から導入。今後は感染症BCPを作成し、標準化させたいと考えています。新型コロナは、この世に存在する無数のウイルスの氷山の一角だと聞きます。歴史的に自然環境を改変してきた私たち人類にとってウイルスとの闘いはこれからも続く試練なのでしょう。