福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

想像力と共感力を問う1年にしよう!


 ビジネスの世界では、もはや当たり前とも言われるソリューション経営。問題解決型とか提案型と呼ばれる手法で、商品をその特徴で売るのではなく、それを使えば、こんな風によくなる、解決する、満足するという視点で経営を展開すること。だから売り手には深い想像力と高い共感力が求められます。

 例えば、スプレー式消臭芳香剤で有名なFという商品のテレビCMがいい見本かもしれません。これまでだと、たくさんの香りが用意されているだとか、除菌率が何%だとか、室内空間だけでなく布製品等にも直接噴霧できるだとか、商品の特徴をアピールする方法が一般的でした。ところがFのCMは、焼き肉屋で食事した後の服につく臭いが消せるだとか、寝汗がしみ込んだ布団を清潔にするだとか、車の中に蔓延したタバコ臭をなくすだとか、それを使えば、生活がこんな風によくなる、悩みごとが解決するという視点から構成されていて、いつも私は、うまくできたCMだなぁと感心させられています。こうした使う側の視点にたって常に物事を捉える姿勢に、私たち福祉関係者は、気づきを促されないといけないし、背景に横たわるビッグ・ホワイのあくなき探求行動に、学ぶ必要があると思うのです。

 これから日本は、団塊の世代が高齢期を迎え、要介護者となっていきます。我慢や辛抱を美徳とする戦前の軍国教育を受けてきた高齢者が減り、戦後に生まれ、民主教育を受け、高度経済成長を支えてきた人たちが主流となります。ニーズの多様化や専門性の訴求はもとより、自覚的な被保険者であり賢い消費者として、これまで以上にサービスに対する要望が広がっていくことは当然の流れです。だから、という訳でもないですが、社会福祉の世界も、そろそろ旧来のマインドセットを修正し「ソリューション福祉」の視点にたった経営に大きくシフトチェンジする必要があると思います。私たちのデイサービスは、お風呂やリハビリが充実していますだとか、ホームヘルプサービスは24時間365日対応ですだとか、特養ならオール個室ですなんていう、売り手中心、商品自慢の「押し売り型福祉」では、多様化し高度化する高齢者のニーズに応えられず、いずれは閑古鳥が鳴く時代がくると思うのです。

 私たちのミッションは、すべての人の居場所と出番を創ることです。言い換えれば「その人らしい暮らしの実現」を応援することです。だからなおさら非ソリューションな福祉ではダメなのです。サービスの提供はあくまで手段であって、このサービスの利用を通じて、日々の暮らしをこんな風に良くしよう、困っている問題の解決にうまく役立てようと対話を重ねる。「その人らしい暮らしの実現」に向けて、そのサービスにどんな機能・役割を持たせるのかを考えて、全人格的にカスタマイズされてこそ価値が生まれるのです。今年は亥年。一竜一猪の精神で、ドまじめに利用者、当事者ファーストのソリューション福祉を構想してみる。まさに、私たちの想像力と共感力が問われる1年になると思います。