福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

HRAPで道拓く


 労務倒産の不安と格闘している社会福祉法人は、決してめずらしくありません。有効求人倍率が5倍を超えるほど人材不足は深刻で、業界では熾烈な人材争奪戦が繰り広げられています。借金して土地を確保し、老人ホームを建て、利用者の希望は募ったものの、スタッフが集まらず開店休業に。稼働はしたものの離職を補うスタッフを確保できず、事業を縮小する事例も増加しています。一方、稼働率が低くても借入金の返済は容赦なく迫ってくるので、わずかな貯金を取り崩して対応を続ける。仮にスタッフが確保できて、すぐさま利用契約を結びサービスを提供したとしても、対価である介護報酬の入金は2ヶ月後。その間の人件費や諸経費を補うために、今度はつなぎ資金として短期借入を繰り返す。こうした薄氷を踏む不安定な状況が続けば、しだいに経営は立ち行かなくなり、ついには破綻。現に、社会福祉法人の事業縮小や民事再生事案は少なくなく、労務倒産も、決して人ごとではありません。

 ヒューマン・リソース・アクティベーション・プラン。英語の頭文字をとって略称をHRAP(エイチラップ)としました。長い名前ですが、人材争奪戦を乗りきるための新しい人材活性化計画です(2019~2022年度)。場当たり的な対応では、現下の人材不況に飲み込まれ、困難は克服できないとの強い危機意識の中から策定されました。募集・広報/採用・確保/育成・研修/定着/処遇・福利厚生/推進体制の6つの分野から構成され、短期的な課題と中長期の課題、経費が必要なものからそうでないものまで様々な項目がずらっと並び、全部で75項目の行動計画が組み込まれています。

 全体を通貫するキーワードはダイバーシティです。ビンテージワーカーと命名した高齢者人材の積極登用や外国人人材の確保にも力をいれます。もちろんキャリヤパスの明確化や1on1の推進、ワークライフバランスの整備促進や週4日・1日10時間勤務制の検討など、多様な働き方の構築にも取り組みたいと考えています。さっそく来月には、多くの企業がしのぎを削る就職説明会という名の人材争奪戦が始まります。早くも2020年4月入社予定の学生さんを対象に行われる説明会です。空前の売り手市場なので、私たちが学生さんを選ぶのではなく、学生さんから選んでもらえるように努力しなければなりません。本質的で琴線に触れるメッセージだけでなくテクニカルな差別化も大切です。予定通り消費税が上がれば、今秋には新たな職員処遇改善のための加算が追加されるので、とても助かります。

 すべての人の居場所と出番づくりをミッションに掲げる私たちにとって、目下、人材活性化は、第一級の戦略的経営課題。人材不足によって起こる経営破綻の次にくるのは身売りです。国も乱立する社会福祉法人の整理統合を目論んでいるので、業界の淘汰はウエルカムなのです。HRAPを羅針盤に、法人あげての総力戦で何としても苦難を脱出し、福祉でまちづくりの展望を切り拓きたいと思います。