2015年の小欄で、私たちが編集・発行しているホープノートをご紹介させていただきました。告知、延命治療への対応、遺産相続やお葬式のことなど、人生のエンディングに関わる項目と、ふるさとや若いころの思い出、仕事のこと、趣味や特技、好きな食べ物や苦手な食べ物、好きな映画や音楽、行ってみたい旅行先など、自分のプロフィールのようなことを書く項目を統合してノートは作られています。プロフィールは、認知症になったときのことを想定したもので、自分にあったケアを受けるための言わば備忘録です。副題に「50歳になったら書きはじめたいノート」と付けましたが、ノートをうめていく作業は、改めて自分自身を見つめ直す機会となり、死生観や自尊感情とも深く関わってきます。
さて、私たちは法人設立以来、地域ファースト、在宅ファーストで事業を進めてきました。どんなに重度な障害があっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるまちを創る。そんな福祉でまちづくりの実践もあって、施設入所を選択せず、地域で家族とともに暮らしている障害者が少なくありません。しかしここ数年、そのご家族、特に親が病気等でお亡くなりになるケースが増え始めています。現場では、お亡くなりになる前に、残された障害を持つ子どもさんのことをもっとよく聞いておけばよかったと悔やむことがあります。日頃は、私たちなりに、障害をもつその方の、人となりは一応知っているつもりですが、でもやっぱり、その親や家族にしか知りえない子どもの特性や心配事はたくさんあるもので、生前にきちんと聞いておくべきだったと感じるのです。これからの日本は、団塊の世代の高齢化とともに、多死社会を迎え、QOLだけでなく、QODの充実が大切になってきます。子どもに障害者がいる団塊の世代も老親となります。できるだけ心置きなく最期を迎えたいという思いは、重要な、そして当然の願望であり、社会的に整えるべきQODの1つだと言えるのかもしれません。
じゃあということで今度は、障害者版のホープノートを作ろうという企画が始まりました。既存のホープノートは、書き込む人が、ご自分の情報や希望をアレコレと書くのですが、障害者版は、障害をもつ子どものことを書き込むノートで、長年、生活を共にしてきた親として、また家族としての心配事や希望を書き綴ってもらうのです。私たちにとっては、これからも続く伴奏型支援のサマリーノートのようなもので、親や家族でしか知りえない貴重な情報を系統的・包括的に知っておくためのものです。
実は、ひそかにノートの名前を考えていて、提案しようと思っています。有力案は「リリーフ・ノート(Relief・Note)」です。リリーフとは、ホッとする、安堵する、安心するという意味で、ノートを書くことで、胸につかえている心配ごとや心残りが少しでも和らげればいいなぁと願っています。できれば、有料化できるくらいの出来栄えになればなぁとも思います。乞うご期待です。