福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

舞台は地域、主体は誰?


 私たち福祉法人は、「地域立」として誕生し、「福祉でまちづくり」を合言葉に事業を重ねて21年が経ちました。設立時には、「地域立」なんていう視点はポピュラーではありませんでした。しかし、2000年の社会福祉基礎構造改革で、社会福祉事業法が社会福祉法となり、従来の六法福祉の時代から地域福祉主導の時代へと舵が切られる大きな転換が起こりました。地域重視の私たちの視点が法律的にも追認されたんだと、当時は大いにワクワクしたことを今も覚えています。あれから約20年が経ちますが、福祉政策における地域への着目トレンドは、ますます大きな広がりと高まりをみせています。

 まずは、2005年頃から始まった地域包括ケアシステムです。福祉、介護、介護予防、保健医療、住まいの分野を軸に、福祉サービスを必要とする高齢者を、自助・互助・共助・公助の力で支えよう提案され、今ではこれを高齢者のみならず全世代対応型にしようと議論されています。また、2014年には生活困窮者支援法が施行されました。法の対象者を細かく定義せず、むしろ制度の狭間に置かれた困窮者を支援しようという設計になっています。相談事業をはじめ就労や教育施策、孤立防止や社会参加促進の分野が設定されていますが、同時に、ネットワークの強化や社会資源の開発なども行い、それらを通じて地域を変えていこうという政策目標が掲げられています。さらに2016年には、厚労省に「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部が設置されました。他人事になりがちな地域の諸課題を「我が事」として、縦割りの公的支援を「丸ごと」へと転換させるともに、支えて側と受け手側といった従来の関係性を超え、相互に支えあう共生の地域づくりをしていこうというものです。そして先月、法改正が行われ、地域福祉計画が、正式に他の福祉計画の上位計画に位置づけられることになったのです。

 いずれも地域、地域、地域のオンパレードです。私たちにとってはチャンス到来ですが、おなかがいっぱいになりそうです。しかも、膨張する社会保障費の削減・効率化の臭いがプンプンするし、各制度がバラバラで政策迷子になっていくかもしれません。地域包括ケアシステムは介護の責任を市民に転嫁する毒饅頭だとする意見も聞かれます。地域共生社会実現の取り組みも似た文脈を感じることがありますが、ここは忌避せず、七走一挫しながらしたたかにいこうと考えています。まずは、私たちが迷子にならないよう地域ニーズを出発点にします。そして法人ミッションであるソーシャルインクルージョンとエンパワーメントの原点に立ち、各制度をうまく引き寄せアレンジしていきたいと思います。医療・介護・障害者施策の報酬トリプル改定と、生活困窮者支援制度の3年後の見直しを迎える2018年度が山場なので、今年が正念場です。とりあえず司令塔として、(仮称)地域包括・共生・困窮者支援事業推進本部のような戦略企画部門を「地域立」で設置する相談をしてみようかとも考えています。