鳴物入りで国が提唱する「地域包括ケア」をヒントに「西成区北西部地域包括支援システム」について考えてみました。単純ですが、イメージは地域で困っている人への支援の輪を広げ、志縁でつながるネットワークと新しいセーフティネットを創るということ。困りごとは、病気、障害、貧困、孤立(排除)の4つに絞ります。むろん4つは相互に連関し、一人の人に同時に体現されることもしばしばです。
病気で困っている人には医療支援が必要です。現代の病気は慢性・難治が多いので、作家の五木さんも言う「治す」から「治める」の視点で進めます。お金のことが心配にならないよう医療費減免制度も始めます。終末期や自宅での看取り支援も必須でしょう。時にはお葬式やお墓のお世話、遺品整理もやります。そして、できるだけ健康寿命を延ばし、短命日本一西成の汚名を返上したいと思います。
障害で困っている人には介護支援が必要です。こちらも障害とうまく付き合う生活を支援していけるようなセンスが必要です。老化は誰にも止められないので、10年後には団塊の世代が一気に要介護となる世界をリアルに捉え、今から備える必要があります。増加する生涯未婚率に加え、そもそも西成は男性単身者の街。家族介護力には期待できません。特に、予防を含む認知症支援がポイントです。
貧困や困窮で困っている人には就労支援が基本です。高齢者の貧困は今さら回避できませんが、元気なうちは働く生きがい就労支援は必須です。生活資金を融通する支援も有効です。ポイントはスネップを含む若年無業者支援でしょう。就学前のシュアスタートプログラム実践や学校中退対策も重要です。創業支援や地場産業の活性化で働く場もつくる。できれば、相対的剥奪状態にも関心を払います。
孤立(排除)で困っている人には居場所と出番が必要です。居場所は、心の居場所、所属欲求の充足を含みます。ポイントは互助な共同体を創ること。共同体は地域が基本ですが、仕事や困りごとなどの社会的経験の類似性、生活様式や趣味の近しさなど多彩に展開します。部落差別や西成に対する忌避意識を抑止する取り組みも必須だし、引きこもり、セルフネグレクト、自死、孤立死問題対策も重要です。
共通テーマに住まいの問題があります。生存の基礎、暮らしの器と言われる住まいですが、西成の老朽狭小密集住宅問題は深刻で、南海トラフ地震が近いことも肝に命じます。ポイントはやはり民間老朽住宅建て替え支援事業を活用して、多様な支援付き住宅を整備し、住み替えを促進することでしょう。
さて、それぞれのテーマは、難易度も高く簡単に結果が出るとは思いません。しかし、「思考は現実化する」のです。豊富な社会運動の蓄積がある一方、地縁や血縁に縁遠い人々が多住する西成だからこそ志縁をコミュニティアイデンティティとして位置づけ、大切に育てていけたらいいなぁと思います。