福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

根っからの問題解決型、ならば…


 奉公、徒弟、見習い‥‥。時代とともに、会社と社員の雇用関係や慣行は、さまざまに変化しています。戦後の高度成長の時代には、家父長制的企業経営や年功序列、終身雇用などを背景に「企業一家」が社会を席巻し、就職といえば会社と家族関係を結ぶことという時代が続きました。そして今日、年功序列も終身雇用も崩れる中で浮上してきているのがエンゲージメントです。すなわち、就職とは会社と婚姻関係を結ぶという考え方です。だから時には、離婚や別居も起こりますが、基本は、会社と社員が一体となって双方の成長に貢献しあうイコールパートナーな関係、やってあげる、やってもらうではなく、やっていこうの関係です。雇用関係とは異なりますが、この考え方は、厳しい内外情勢に苦労されている今日の社会運動や市民運動、町会や自治会などの地縁団体における組織と構成員の関係強化を考える上で、大切な示唆かもしれません。

 さて、当法人ではこうした考え方を早くから取り入れ、職員エンゲージメント調査などを実施しながら、各種の取り組みを進めています。エンゲージメントは、①組織ミッションへの共感度、②会社への愛着度、③同僚への信頼度、④組織への献身度、の4つの指標で評価されます。これらのレベルが高いほど職員満足度は高いとされ、ひいては利用者満足度へも大きく影響します。ちなみに、当法人のエンゲージメントレベルはまだまだ低く、多くの課題を抱えています。かろうじて離職率は低下しているのですが、引き続き「他に何ができるか」を問い続けなくてはなりません。

 そこでヒントになるのは、社会問題をビジネス手法で解決していく社会的企業の存在です。欧米ではずいぶん前から始まっているようですが、日本でも「社会貢献でメシを食う」といった問題解決型の働き方に魅力を感じる若者が増えてきているのです。そして、給料は高くないのに、こうした社会的企業で働く社員のエンゲージメントレベルはとても高く、会社成長の大きな原動力になっているそうです。

 そんな中、私は厚労省の幹部職員が講師を務める福祉セミナーに参加する機会がありました。90分くらいの講義でしたが、その中で何度も繰り返された言葉があり、今も脳裡に残っています。それは「問題解決型社会福祉法人への転換」というものです。一瞬、ムムっと思ったのですが、「非課税扱いにふさわしい貢献」という流れの中での発言でした。問題解決型とはえらい言われようだなと思いつつ、「社会福祉法人は社会的企業になるべきだ」という趣旨だと解しました。これは追い風です。当法人は創業の精神もミッションも言わば問題解決型。その実現への取り組みが、社会的企業のように、職員のエンゲージメントレベルを上げ、しかも社会からは非課税にふさわしい貢献団体として認証されるのなら、まさに一石二鳥。そんな欲張りな「午(うま)い話」を想像した年の初めとなりました。