福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

福祉法人のSF的レゾン・デートル(存在価値)


 6月の完全失業率が3.9%と発表されました。アベノミクスなのか、4%台を割り込むのは久しぶりで、ひとまず朗報です。ただし、最近話題の統計学ではありませんが、職安登録をしてない失業者はこの失業率に含まれていません。いずれにせよ、依然として多くの人が失業していることが問題で、この中には労働市場から排除されやすい多くの就職困難者が滞留していることは想像に難くありません。

 世界には、失業率ではなく就業率を基本に雇用政策を進める国があります。働くことは、生計を支えるという経済的価値のみならず、社会参加や自己実現など、人間にとって貴重な価値を生む営みなので、働きたい人がみんな働ける「フル就業」な社会をつくろうという発想。失業率を減らすという発想でなく、就業者を増やす戦略はポジティブでセンスがいいと思います。また、私たちの事業理念でもある「福祉でまちづくり」には互助の思想が息づいていますが、労働が互助の原風景であり、最高の完成形であるなら、まさにウェルフェア・トゥ・ワークです。福祉が労働問題に取り組む価値はここにもあります。

 さて、欧州を中心に、このフル就業な社会づくりに大きく貢献しているのがソーシャルファーム(以下SF)と呼ばれる社会的企業の存在です。一般に社会的企業はソーシャルエンタープライズと呼ばれ、ビジネス手法で社会問題を解決していく企業のことを指しますが、SFは、①従業員の25%以上が就職困難者、②売上の50%以上は一般の商取引、③利益は社会に還元、④地域住民のための事業が中心、などの特徴をもつ社会的企業の1つです。そう、もうお気づきで、①の雇用要件を除けば、他の条件はすべて既存の福祉法人に当てはまり、雇用要件さえ満たせば注目のSFに仲間入りできるのです。すでに千葉県のとある福祉法人では、「ユニバーサル就労」と名づけて大々的に取り組んでおられます。

 私たちも市民立・地域立の組織として、また、法人ミッションであるソーシャルインクルージョンを職員採用の面からも具体化する取り組みを重ねてきました。その結果、この7月末現在では、パートを含む従業員総数398人のうち、障害者、一人親世帯、外国籍住民、高齢者等のいわゆる就職困難者を合わせると147人(重複除く)で、全体の37%になります。その意味では、私たちはすでにSF化している福祉法人とも言えなくはなく、満足度や定着率などに課題はありますが、「まあ、いい線いってる」と思っています。全国に18,000余ある福祉法人のせめて半分でもSF化を実行できれば、就職困難者が活躍の場を見出せる大きなパワーとなるでしょう。国は生活困窮者自立促進事業として「就労準備支援」や「中間的就労の促進」という政策を打ち出し、これを福祉法人等に担ってもらいたいようです。志ある福祉法人が本業での経験を応用し、競い合うように積極的にコミットできれば、社会福祉の担い手としての矜持はもとより、社会的価値も少しは上がるかな、と考えている暑い夏です。