いま、政府の社会保障制度改革国民会議で、介護保険財政の問題が議論されています。親の介護に直面して初めて問題の深刻性に気づくという人が多いようですが、介護はすべての市民にとってとても大切で身近なテーマです。少し込み入ったお金の話になりますが、一度、考えてみたいと思います。
まずは基本をざっくりと。介護保険は、費用全体を100として45%は保険料、45%は税金、10%はサービスを利用した人の自己負担でまかなわれています。総支出は年間約8兆円(約10年で2.2倍増加)。高齢化の進行により、この費用はさらに膨れ上がり、財政は火の車となる。将来世代にツケを残さないためにも、どのような方法で制度の持続性を担保していくべきか、というお題です。
少子高齢化、成熟経済、借金大国日本のトレンドは基本的に変わらないとして、考え方はシンプルに「入りをはかりて、出ずるを為す」が基本です。が、介護保険は支出額を基本に収入にあたる保険料等を決めるので、まずは支出から見てみます。支出減には、A)給付対象を減らす、B)介護報酬単価を引き下げる、の2つの方法があります。Aの給付対象を減らす方法は、イ)軽度高齢者などを保険対象から除外する、ロ)家事援助など給付対象サービスを減らす、ハ)介護予防などで新規利用を抑制する、の3つ。Bの報酬単価の引き下げは、事業者にとって収入減となるので、ニ)いずれ介護労働者の賃金カットや人員削減等につながっていくでしょう。
次に、収入増を見てみると、C)保険料収入を増やす、D)税投入を増やす、E)利用者負担を増やす、の3つがあります。Cの保険料収入を増やす方法は、ホ)基本保険料を上げる、ヘ)20歳以上など支払う人を増やす、ト)総報酬割など保険料の応能性を強化する、の3つ。Dの税投入を増やす方法は、チ)ずばり消費税のさらなる増税。Eの利用者負担(現行1割)を増やす方法は、ヌ)一定所得以上の所得のある利用者の負担を2~3割の応能負担にする。以上、他にもあると思いますが、まずは、A~Eの5分野(イ~ヌの9つの方法)から処方箋を検討することが基本になるでしょう。
さあ、もしあなたが財務大臣ならどの方法を選択するでしょうか。「全部イヤ」は通りません。もちろん1つだけで万事解決というわけにもいきません。いずれも痛みを伴う改革で、利害も対立します。なので、当事者、福祉関係者はもとより、社会運動に携わる人にもぜひ考えてもらいたいテーマです。すでにこれらは国民会議等で議論されており、この8月にもまとめが行われます。その後、舞台は政治へ移され、決定へと進んでいきますが、これからの政治が担うべき「負の分配」を象徴するテーマです。さて、来月は参議院選挙です。安心と希望に満ちた高齢社会の実現に向けてしっかりと処方箋を考え、自分の意見にもっとも近い政党や政治家を選ぶ暑い夏になればと思います。ちなみに私が選ぶ処方箋は…