先月30日、国の法制審議会・家族法制部会が離婚後の親権のあり方に関する見直し要綱案をまとめました。婚姻件数が年間約50万件に対して離婚率が約36%という状況の中、77年ぶりの見直しとなり、各方面から賛否の声があがっています。現行法では、離婚後は父母いずれかの単独親権しか認められていませんが、法が改正されれば、婚姻中の共同親権を継続できる、つまり離婚後共同親権が可能となる制度が誕生します。親権は未成年の子に対して親がもつ責務のことで、身の回りの世話や教育、居所指定の身上監護、財産管理などが規定されています。今国会に改正法案が出される予定です。
私が危惧していることは、単独にせよ共同にせよ、子どもの権利を無視した親権自体の問題です。親権が親の権利であるかのように誤解しているケースも少なくありません。民法818条で「子は父母の親権に服する」とされ誤解を生む要因になっています。しかもこの規定は、明治民法の「子は其(そ)の家に在る父の親権に服す」という家父長主義から引き継がれたとされ、子どもの権利条約や意見表明権の尊重という視点からすれば時代錯誤も甚だしいのです。要綱案は「子の利益を重視する」と言っていますが、審議会では子どもの権利を柱とした論議はあまり行われていません。まずは親権自体の今日的あり方が問われなければなりませんし、最近は未婚ひとり親家庭や結婚と出産を区分する価値観が増えるなど家族形態が多様化しているので、これからの親権を考えるうえで念頭におく必要があります。
さらに、要綱案では共同親権か単独親権かを選択できるイメージをもつかもしれません。しかし実際は、共同親権が原則で、例外として単独親権を認める運用がなされていきます。例外はDVや虐待などの子の心身に害を及ぼす恐れなどが想定されています。これまで約3年にわたる議論の過程では、①原則単独・例外共同、②原則共同・例外単独、③個別に単独か共同かを選択できる、という3案が示されていたのですが、どうも国は②の方向に舵をきったようです。伝統的家族観をベースとした夫婦別性への反対やこども庁からこども家庭庁への急変、ジェンダー平等やLGBTQの権利擁護の否定などといった最近のバックラッシュな動きが、②の原則共同の方向を選択させたという感じがしています。
私は、③の選択的親権制度に賛成です。単独か共同かについては、それぞれにメリットデメリットがあり、大変センシティブなテーマなので、国が誘導するべきではありません。子どもの権利尊重をベースに当事者が個別に選択することがいいと思います。もし当事者による選択の不一致や選択後に不具合が起これば、裁判所等の公的な機関が調整に入りサポートしていけばいいのです。はじめは多少の混乱があるかもしれませんがしだいに定着するでしょう。そのためには家裁の抜本的機能強化は前提です。子どもファーストな親権の確立と共同含む選択的親権制度で日本も世界標準を目指していくのです。