福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

寿命格差をなくしたい

 以前本コラムで、2015年度調査をベースにした全国市区町村の平均寿命の実態をお知らせしました。そして先般、2020年度調査の概要が発表されましたので、今回はこのことについて考えてみたいと思います。なお、数字ばかりの細かな報告となりますがご容赦ください。

 2015年度、西成区民の平均寿命は全国1700余の市区町村の中で男女とも最下位でした(西成男性74歳、西成女性84歳)。男性の全国平均は80歳だったので西成男性は6歳短く、当時、全国トップだった横浜市青葉区の83歳と比べると約9歳も西成男性が短命という状況でした。一方、女性の全国平均は87歳でこれと比べると西成女性は3歳短く、全国トップの沖縄県中城村(89歳)と比べ西成女性は5歳短命という厳しい結果でした。なぜ西成区民はこんなにも短命なのでしょう。

 あれから5年、2020年度調査ではどうなったのか。これまで西成区の短命問題には私なりに関心をもちながら各種の事業を展開してきました。しかしながら芳しい結果を得ることができず、2020年度も男女とも西成区が最下位となりました。残念です。西成男性の平均は73歳で15年度より短くなり、全国平均(81歳)に比べると8歳も短く、15年度よりも差は広がっています。男性の全国トップとなった神奈川県川崎市麻生区(84歳)と比べるとなんと11歳の開きがあります。西成女性の平均寿命は15年度からやや伸びて85歳でした。全国女性は88歳だったので西成女性は3歳短く、全国トップとなった川崎市麻生区(89歳)と比べると西成女性は4歳短命という結果となりました。男性の全国下位3位は西成区、浪速区、平野区ですべて大阪市内。女性の下位3位は西成区、今別町(青森県)、田舎館村(青森県)でした。ちなみに、男性の下位4位~10位はすべて青森県内、女性の下位10地区のうち6ヶ所が青森県内でした。一体どうしたんでしょう青森。不思議です。

 さて、西成区はなぜこれほど寿命が短く長生きできないのか。乳幼児死亡率や自死状況の確認も必要ですが、それでも疑問はぬぐえません。たかが平均寿命ですが、されど平均寿命なのです。西成区をとりまくさまざまな生活・社会課題の累積が寿命に現れているのだろうと思いますが、解決への道筋、センターピンは何なのか。男女とも全国トップの川崎市麻生区では何か特別な活動や仕掛けがあるのでしょうか。ぜひ学んでみたいと思います。西成区は人口減少も急速で、きっと寿命の短さもこれに拍車をかけているのでしょう。寿命格差の解消。難問ですがあきらめません。引き続き努力していきたいと思います。しかし、私たちだけで実現するのは不可能です。行政や医療関係者をはじめ、あらゆる関連団体と協働して取り組みを進めていく必要があります。そのためにも大学等と協働して本格的な実態調査を行う。そして、この問題を日常的に話し合うプラットホームが西成区にあればいいなぁと思います。