1963年の供給開始から半世紀以上たった原子力発電。安くて安全という神話に騙され続けてきた私は今、どうすれば脱原発が実現するのかを考えています。2023年6月現在、日本の原発は全部で51基。うち再稼働は10基(1基停止中)、稼働準備17基、24基は廃炉が決定しています。そして国は、今も続く福島の辛苦はもとより燃料デプリ問題など廃炉すらまともに展望できていないのに、2014年に再び原発を重要なベースロード電源と位置付けました。再稼働、運転期間の延長、そして新設。福島では国内外の批判をよそに今夏にも汚染処理水の海洋放出を行おうと躍起です。原発は火力に比べ地球温暖化防止に資するというプロバガンダは、全く幼稚な論理のすり替え、後知恵なのです。
原発のリスクは甚大です。地震や津波などの自然災害による被害は福島で証明済み。テロの標的になったり、ウクライナではザポリージャ原発が武力攻撃にさらされています。もし戦争にでもなれば原子爆弾がなくても発電所が爆破されたら日本は終わりです。そして原発にはもはや安いという経済合理性もありません。新設コストは安全基準の強化などにより1基1~2兆円となり、電気代に上乗せされるのです。非稼働原発の多額の維持費や福島原発の事故処理には2050年までに81兆円かかるという試算もあります。百歩譲って、仮に経済合理性があっても、やっぱり原発はダメ。キケンなのです。
元首相の小泉さんは「核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)」問題を指摘し、原発に猛反対しておられます。発電所稼働により排出され続ける核のゴミ。強い放射線を放ち無害化に10万年かかるとされています。国は地下300mの地中に埋めて処理する方針ですが、日本は地震国。地盤が弱く火山や津波もあり地中処分は非現実的、無謀です。処分場選定には、文献調査→概要調査→精密調査が必要で約20年かかります。調査後の施設建設や搬入まで含めると処理だけで100年以上もかかるそうです。文献調査を行った自治体には最大20億、概要調査は最大70億の交付金が出ます(精密調査は未定)。誘致を検討している北海道や長崎県では処分場をめぐって市民の対立・分断が始まったりしています。
さて、どうすれば脱原発が実現するか。メルケル元首相のような政治決断は不可欠ですが、同時に原発にかわって再生可能エネルギーを主役にした社会をつくることが肝心です。再生エネルギーは技術的にも格段に進歩し、安定供給が可能な段階にきているようです。現在、当法人も関西の大手電力会社から電気を購入しています。ということはその電気には原発由来のものが含まれているわけで、ここを修正する必要があります。電力事業は自由化され再生可能エネルギーのみを売る会社も増えつつあり、こういったところから電力を調達する。小さな一歩ですが先ず隗より始めよ、です。そして政治は、将来に禍根を残さないよう今からでも原発回帰を止め、脱原発に知恵とお金を使うべきだと思います。