福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

コロナKPI

 9月14日現在、新型コロナウイルス感染症の実行再生産数は1を切って0.93となり(東洋経済オンライン調べ)、第7波もようやくピークアウトの兆しが出てきました。一般にコロナ感染は、①曝露→②感染→③発症(軽症)→④悪化(中等症)→⑤重症→⑥死亡、のプロセスで進みますが、これまで国のコロナ対策の重要指標(KPI)は、主に②の感染、すなわち検査陽性者の数でした。しかし、緊急事態宣言等の影響によりコロナ関連の自死、倒産や廃業、失業や窮乏などの深刻な社会問題が増加し、特に今年の第6派あたりから社会経済活動を機能させることの重要性が強調されるようになりました。KPIも、⑤の重症と⑥の死亡へと移され、まもなく陽性者の全数把握も見直されます。ワクチンの普及や治療薬の開発、第7派オミクロン株は重症化率や致死率が相対的に低いこと(死亡者数は過去最多)などから、やっと日本でもウイズコロナ社会へと移行していく政治判断が進められています。

 しかしです。肝心の重症や死亡の定義があいまいで、KPIの重点としてふさわしいのかという疑念があります。例えば重症の定義は、肺炎に偏りすぎていて、エクモ装着など重い肺炎の症状がなければ重症に分類されないことがあるのです。医学的には、死に直結する重度の衰弱状態や内臓疾患なのに、肺炎症状が関連しなければ重症に分類されないというのです。その結果、軽症と分類された人が重症類型を経ないまま死亡するケースもあり、「重症者<死亡者」というヘンテコな事態も起きています。

 さらに不可解なのが死亡の定義です。極端な場合、交通事故で搬送されてきた人がそのまま死亡しても、搬送時に行われたPCR検査の結果が陽性であればコロナ死亡とカウントされるのです。また、死亡診断書の原因死欄にコロナ以外の病気が書かれていても、検査陽性者であれば、コロナ死亡として集計されてしまいます。しかも国による統一基準がないため、集計する自治体によって判断や分類がバラバラになっているというのです。ちなみに奈良県からは、第6派と第7派の死亡者の46%はコロナウイルスが直接の死因とは認められなかったとの報告があり、愛知県では、第7派で死亡した300人超(8月17日時点)のうちコロナ肺炎単独の原因で死亡した人はいないという知事発言もありました。

 介護現場は大変ですが、私もコロナ政策のKPIは陽性者数ではなく重症・死亡に転換し、社会経済活動を機能させるべきだと思います。だからこそ的確な実態把握が不可欠なのです。しかし、死亡数ですら正確なデータは別に集計される「人口動態統計」でないとわからないというのですからあまりにズサンです。顕在化している国のデータ改ざんや不正統計以前の問題です。この2年半の知見を活かし、重症と死亡の定義を再整理し、全国的な統一基準で正確なコロナリスクを把握しないと対策を間違えてしまいます。今冬は季節性インフルエンザとのダブル流行の可能性大です。あまり時間はありません。