福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

貧すれば鈍する

 先月末、全国に約2万ある社会福祉法人の決算が終わり、順次公表が始まっています。各法人ともそれぞれに経営理念の実現をめざしつつ、財務の安定という重要な課題を抱えながら経営されておられます。国の報酬カットに加え、新型コロナ感染症という大変厳しい環境下での2021年度決算です。

 クオリティの高いサービスの維持向上と安定した財務の確立は車の両輪です。社会福祉法人は公的な団体なので利益を出してはいけないと誤解されている方もおられますが、事業経営である以上、適正利益の確保は不可欠です。報酬が下がる一方で人件費は上がり、建物は老朽化して管理・修繕コストも増えていきます。変化する地域ニーズに対応できる新しいサービスの実施や開発にも先立つものが必要です。さらに社会福祉法人に課せられている地域公益事業(活動)の展開にも財源は不可欠なのです。

 当法人も決算が終わりました。大変厳しい結果となっています。すでにコンサルティングを受けながら全員参加経営を基本とした業務改善に取り組んでいます。並行して、企業力指数という財務分析の手法を使って経営改善にも取り組んでいます。会計のプロなら多彩な計算式を用いて財務分析し、つぶさに課題を抽出して経営改善に取り組んでいくのですが、私たちは、簡便な企業力指数を用いています。特徴は、作成にそれほど手間がかからない、シンプルなので理解しやすい、他業種との比較も可能、などです。逆に簡便すぎるところがデメリットかもしれませんが、管理職や職員の理解も広がりやすく、つかみならこれくらいがいいと思います。ちなみに松本敏史さんという学者の方が苦労して開発された手法です。また、個人的にはこの指数以外に総資産利益率(ROA/効率性)には着目しています。

 少し長いですが、せっかくなので紹介しておきます。企業力指数は、①収益力(売上獲得能力)=売上高÷(売上高-経常利益)、②支払い能力(債務返済能力)=流動資産÷負債、③活力(資産活用能力)=売上高÷資産、④持久力(財務安定性)=(資産-負債)÷負債、⑤成長力(成長性)=資産÷(資産-当期純利益)、⑥企業力(総合性)=①~⑤の平均値、の6指標で構成されています。初めての方や会計に門外漢の方はチンプンカンプンかもしれませんが慣れれば大丈夫です。この算式は実によくできていて、計算結果が1なら標準的、2以上は超優良、0.6未満は危機的とジャッジされます。単年度の成績(PL)と累積成果(BS)を使って指数が作成されるのでバランスもとれています。法人ミッション実現とクオリティの高いサービスの維持向上のためには必要な知識なので是非勉強してみてください。法人では部門間を比較したり、同業他社とも比べてみたいと考えています。よく「貧すれば鈍する」と言われますが、これは法人経営にもあてはまると思うのです。適正利益を確保して、「福祉でまちづくり」を持続可能なものとするためにも、「もうかってまっかぁ」の精神でかんばります。