先月の終り、厚労省から「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理」が公表されました。総論に加え、9項目の個別論点が提示され、来年以降の法改正をめざして議論が進められています。
「論点」の中で私が強く関心をもったのは次の4つです。1つ目は就労準備支援、家計改善支援、居住支援の3事業を必須事業化させる方針を示したことです。これまで本事業の実施は自治体裁量で、地域によってバラつきがありました。コロナ禍で進められた膨大な特例貸付金の返済が来年1月からスタートします。地域差の解消はもとより、就労、家計、居住をはじめとする各種支援を丁寧に積み上げ、返済猶予・減額・免除等の措置も整えつつ、デフォルトが起こらないようにしなくてはなりません。
2つ目は、これもコロナ禍において特例で行われた住宅確保給付金について。論点では「全世代において住まいの不安定化問題が顕在化」しているという現状認識を示し「特例措置を恒久化すべき」と指摘したことです。かねてから私たちは生活保護の住宅扶助を単独給付できようにしてほしいと訴えてきました。特例措置の恒久化は居住安定のための家賃補助(現金給付)として機能するので、ここに現在の公営住宅(現物給付)が加われば、日本の公的住宅政策は本格化するだろうと期待しています。
3つ目は、自立支援の項目で「家族が持つ機能の社会化」が提示されたことです。西成区は家族力が弱い単身世帯が多住する地域であり、家族機能の社会化は必須の課題です。特に単身高齢者問題は、孤立・孤独、無縁社会の象徴であり、止まらぬ少子化、生涯未婚率の増加に直面している日本の将来を映す鏡のような存在です。日常のちょっとした支え、認知症の人の支援、転居・入院・手術の際の身元保証、葬送や遺品整理、死後事務を含む終活のアシストは待ったなし。むろん地域互助も大切です。
4つ目は生活保護制度との連携についてです。論点は「両制度間の理解を深め、共通する理念の下で支援を実施する必要」があると指摘しました。これをあえて好意的にとらえ、是非とも現在の生活保護制度の運用改善を期待したいところです。保護を受けさせないための水際作戦の横行、扶養照会の乱用やスティグマ問題など課題は山積です。生活困窮者自立支援法にもとづく実践がきっかけとなり、生活保護制度も自立と尊厳、基本的人権の尊重という「共通する理念」に立ち返るべきだと思います。
最後に、この際なので関連施策の関係整理にも取り組んでほしいと思います。孤立・孤独対策の強化や地域共生社会の推進などの新たな施策との整合は喫緊の課題です。また、自死対策、住宅セーフティネットやホームレス自立支援対策などの既存施策を含めると、思い切った施策の再編整備が必要な時期にきていると思います。中でも生活困窮者支援、年金、雇用を含む社会保険制度や生活保護制度を再編し、人権の視点から時代にあった新しい総合的な生活保障制度の構築を構想すべきだと感じます。