介護保険創設から20余年を経て、ケアプラン制度をめぐる2つの改革が始まっています。これらの動きを枝葉末節と捉える人がいるかもしれません。しかし私は、ことは存外に重大で、介護保険制度の行く末をうらなう構造的な改革だとみています。ケアプランを作るケアマネージャーさんも大変です。
1つは質的な改革です。「適切なケアマネジメント手法の手引き」を国が6月に公表したのです。全国的なケアプランの質のバラつきを平準化させようという試みです。しかし、平準化が画一化を生み出し、家族構成や居住、障害の理解や孤立状態などの個別の状況を軽んじたプランにならないか。また、手引きでは、適切なプランとは、基本ケアをベースに疾患別ケアを加えることのみをことさら推奨している点が気がかりです。それは、医療モデル重点型プランへの転換を企図したものではないかと感じるからです。もちろん疾患別対応は重要です。しかし、介護や医療を含め、身体・心理・社会といった包括性、総合性をもった生活モデルがケアプランの基本です。これだと介護が医療に侵襲され、医療の周縁へと追いやられる危険性を感じます。病気はみるが患者はみないと酷評される医療と同じく、障害はみるが人や暮らしはみないケアプランになってほしくはありません。さらに、ご本人の意思決定支援という言葉はありますが、全体としてサービス提供側の論理が幅を利かしていることも気がかりです。
もう一つは量の改革です。今月にパブコメが終わり、10月から導入されますが、ケアプラン作成において、区分支給限度基準額の利用比率が7割を超え、かつその6割以上が訪問介護となっている事業所を抽出し点検・検証するというのです。基準額とは介護度に応じて利用できるサービスの上限額を示したもの。介護度認定を経て必要な支援量として公的に認められた額(権利)であるにも関わらず、ここに制限を加えようというのです。それなら介護認定制度は廃止すべきです。国は「事業所の抽出条件であって、個別給付の制限ではない」と説明していますが、結果として個別給付制限は起こります。しかも今、財政はひっ迫しているので、条件はいずれ見直され制限強化へと向かうのはむしろ必定。要介護5の人が要介護3のサービスしか利用できない、ヘルパーさんの支援が受けたくても認められない事態が起こるかもしれません。市民を強制的に介護保険に加入させ、掛け金を払わせておいて、いざ給付の段階で、適正化と称して利用を制限する。理不尽極まりない新手の詐欺と言わざるを得ません。
むろん手引きを好評価する意見もありますし、不正をする事業所があるのかもしれません。また、ケアプランをめぐっては利用者負担制導入を強く求める財務省との駆け引きもあるのでしょう。しかし、介護保険の理念や目的が実質的に骨抜きになり、高齢者の尊厳が冒涜され、権利をはく奪するような邪悪な改革はダメです。放置すれば障害者施策への波及も免れない、侮るなかれの改革です。ご注意を。