福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

2回目も「✕」

 東京オリパラを終えた今年11月、大阪市を廃止し特別区を設置するいわゆる都構想の是非を問う住民投票が行われます。前回2015年に行われた住民投票では、僅差で都構想は否決されましたが、推進派の熱意と政治の思惑によって2回目の投票が行われることになりました。構想の中身は前回とほぼ変わらないので、基本的に功罪は同じ。大阪の統治機構の大改革なだけに無関心ではいられません。

 前回、私は本欄で、都構想には「反対」と意見を述べました。今も意見は同じです。理由はいろいろあるのですが、大阪市を廃止し、その権限や財源を府に移管して強大な大阪府を創り、そこに4つの特別区を設置する機構では、住民自治の発展につながらないと思うのです。そして何より、現在の都構想の青写真があまりに荒っぽく不透明で心配です。一度可決されると後戻りできない、まるで博打のような危険な選択を迫る住民投票なので、まずは反対票を投じて前のめりにストップをかけ、特別自治市や総合区を含め大阪市の将来構想をもっと幅広く検討し、改革を進めても遅くはないと思うのです。

 例えば福祉分野だけをみても不透明だらけです。介護保険は新設の一部事務組合に集約されるようですが、組合には新たな施策推進等の権限はなく、地域の実情や住民の意思が反映されるのか甚だ疑問です。法律で地域福祉の中核とされた市社協や区社協といった社会福祉法人はどうなるのか。新設の特別区社協が、今の区社協なみに地域福祉に取り組むのは困難で、地域包括ケアシステムにも逆行します。また、区単位に設置されている障害者の相談機関である基幹型相談センターはどうなるのか。区単位から特別区単位になれば、どこがニアイズベターなのか。各区の障害者自立支援協議会はどうなるのか。新設の地域自治区や地域協議会と関連づけて整理され、現在の権限や役割等は継承されるのかなど、都構想の不透明はあげればきりがありません。この他にも基本となる行政施策の方向や市民サービスの行く末すら、投票後の検討課題となっているので、都構想の是非など到底判断できず、早計にすぎるのです。そもそも都構想は、成長や副首都の実現が基調なので、住民サービスは良くて横滑り、市民生活の安心・安全は後付けになるのでしょう。もちろん当協会の成長・発展にとってもよくありません。

 むろん大阪市が今のままで良いわけではありません。母都市機能の継承、人口減少や少子高齢時代に向け、人口30万人くらいを一つの行政単位に、自治を活性化させる抜本的な構造改革は不可避です。タラレバ話ですが、もし次の住民投票で賛成多数となれば、2024年末に大阪市は消滅し、2025年には、特別区の新設と巨大な権限と財源をもつ大阪府が誕生します。私は、最低でも新大阪府を暴走させないようチェックが可能で、かつ特別区のサービスを低下させず、むしろ発展させる住民自治ファーストな自治体形成を目的とした「大阪府基本条例」を4年以内に制定すべきだと思っています。