福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

今、電気がおもしろい

 関西電力を舞台にした原発マネーの闇が顕在化しつつあります。国の巨額な交付金を背景にした不透明で不適切な資金の動きは、それを聞くたびに、ゲンナリします。もともと私は、原発の消極的容認派だったのですが、東日本大震災以降、考え方が変わり、今は原発ゼロの立場です。震災で原発の安全神話が崩れた以上、即刻中止の政治決断を下すべきだと思うのです。その上で、太陽光や風力をはじめとするFIT電気(再生可能エネルギー)の生産・供給体制を強化する電力政策へと転換するのです。

 ここ数年、電力分野は大規模な規制緩和が進んでいます。電力事業は、発電→送配電→小売のシステムで構成されていますが、先ごろ、小売の完全自由化が行われ、熾烈な価格競争によって、旧来の大手地域電力会社より安く電気が買えるようになりました。新たな小売電気事業者も増加していますが、最近では、FIT電気に特化した事業者が登場し、企業への販売を中心に、急成長しているというお話を聞く機会がありました。夢があり、たいへん将来性を感じる事業で、しかも電気料金が安いのが魅力的で、何とか西成でもFIT電気を普及させる取り組みが企画できないかと考え始めています。

 イメージは、こうです。私たちが自ら電気小売事業者となるか、あるいは既存事業者の代理店となってFIT電気を調達・確保し、西成の一般家庭や企業、当法人を含む関連施設に販売するのです。送配電は、既存の電柱を使用するので、特別の工事は不要。停電など万が一のことがあっても、旧来の大手地域電力会社からの供給に切り替わるので安心です。もちろんビジネスなので、使用量に応じて手数料をいただき、それを諸経費と利益にあてます。そして、その利益の一定割合は福祉やまちづくり活動等に還元し、地域で好循環を作り出すのです。どうでしょう、売り手良し、買い手良し、世間良しだと思いませんか。いわば西成ワンチームで地球温暖化防止への歩みを始めていこうという提案です。

 私たちは社会福祉事業者なので、さらに工夫を加えます。この低価格なFIT電気を生活保護世帯や低年金生活者、ひとり親世帯など経済的困窮を抱える家庭に重点的に販売するのです。先行事例では、現行の2割程度は電気代が下がるので、西成でも購入者は確保できると楽観しています。むしろ削減が続く生活保護費への抗いくらいにはなるでしょう。しかもユーザーは、電気代が安くなるだけでなく、間接的に環境保護やまちづくりに貢献できるのですからより満足度も上がるはずだと確信しています。

 原発ゼロは唱えているだけはダメです。再生可能エネルギーの需給を強化しなければ説得力は生まれません。しかもそれがまちづくりや困窮者支援につながるのであれば付加価値は絶大。電力分野は今、規制緩和だけでなく、地産地消、家産家消など大変革の渦中にあります。この機を逃さず、貪欲にまちづくりに活かしていく。もう年の瀬、新年には「電気で福祉」の戦略を描こうかと考えています。