最近、この2つ、似てるなぁ、と感じた事がありました。
1つは、ホームレス支援に関することです。ネットカフェ難民等の課題はあるものの、ここ数年、全行的なホームレス支援等の努力によって、路上生活者が激減するなど、一定の成果を上げてきました。しかし一方、先月の台風の際、東京都内の避難所でホームレスの受け入れを自治体職員が拒否するという最悪な事案が露呈。これまでの取り組みはいったい何だったのか。支援を通じて路上生活者が減少することが、実は、市民社会が抱えるホームレス排除の論理に、結果として同調・加担する構図になっていなかったか。これまでの私たちの取り組みを真摯に振り返る必要性を示唆する事案だと思います。
もう1つは、障害者雇用の問題です。多くの人々の努力によって、障害者の就業者数が15年連続で過去最高を更新している足元で、企業向け貸農園と称するビジネスを舞台に障害者法定雇用率が売買されるという事案が広がっています。企業側から見れば障害者雇用の外注化、いわば丸投げで、法定雇用率達成への理念なき熱意が、雇用率の売買という愚行をつくりだし、法制度の趣旨を完全に骨抜きにしてしまっているのです。当然、障害者雇用の外注は、形を変えた忌避、巧妙な排除へとつながる危険性をはらんでいるのに、今、これらの取引を行政が支援するという深刻な事態へと発展しています。
似てるなぁと思うのは、ホームレス支援も障害者雇用促進も、本来の施策目標は排除のない共生社会の実現であるはずなのに、この側面に対する私たちのアプローチが脆弱になっているのではないか、2つの出来事はそうした脆弱性の表れではないかということです。日々の実践が個別支援に終始し、課題の背景にある社会的忌避や排除の問題へのコミットメントがおろそかになると、それは単なる自己満足で、ソーシャルのないケースワーク、対処療法の域を出ない恩恵・慈恵的な取り組みになってしまう。場合によっては、忌避、排除の潮流に組み込まれ、その片棒を担がされることもあるのです。だからこそ今一度、原点にたちかえり、すべての人の人権確立の重要性を再確認すること。そして、個別支援のみに埋没せず、忌避や排除といった厳しい社会の現実を常に念頭に置きながら、日々の実践を人権・反差別の視点からフィードバックし、工夫・発展させていくことが大切だと自戒を込めて思うのです。
当法人の設立趣意書には、人権を基本に自立、参加、共生の社会をつくると書かれています。1階部分に人権があり、その2階部分に自立、参加、共生を設定するイメージです。2つの出来事をみて、やはり人権や反差別の視点なき自立・参加・共生はダメだなぁ、ヒューマンライツの名に恥じない福祉でまちづくりの実践がますます重要だなぁと思いました。当法人のスタッフには、改めて、法人設立趣意の原点に立ち返った日々の実践の重要性を喚起していきたいと思います。ほんと、先達に感謝です。