この10月、社会福祉法人をはじめ全国の主な福祉事業所は、お金にまつわる3つの同時改訂に対応しなければなりません。1つ目は消費税増税。2つ目は特定処遇改善加算の導入。3つ目は最賃改訂です。消費税増税は、介護や障害者支援サービス等にも影響するので、重説、契約更新をはじめとする利用者への対応、特定加算は制度設計や職員への説明・周知など一通りの業務が発生します。基本的には財務リスクの少ない事案ですが、最賃は、人件費増となる改訂で、経営上のリスク想定が必要です。
最賃改訂に伴う当法人での人件費上昇額は試算中ですが、大企業のように内部留保のない私たちのような福祉事業所において、5%程度の適正利益を維持し、固定費を変えずに人件費増への対応をする方法は、収入増しかありません。変動費率が2割程度で、仮に人件費が3%上昇すれば収入はその25%増しの3.8%アップが必要です。例えば、人件費が100万円増なら収入は125万円以上の増が必要だということです。福祉の需要は増えていると楽観する人もいますが、西成区の人口激減や業界を席捲している人材不足の中、新たな人材投入なしに、これほどの増収を実現することは簡単なことではありません。経費削減もありますが乾いた雑巾を絞る状態で、原資の確保は期待薄です。一般民間企業なら商品の値上げも選択肢でしょうが、福祉は公定価格なので、ここに触れることはできません。
愚痴や泣きごとを言うつもりはありません。とにかく今、何ができるか、どうすればクリアーしていけるかを考えなければなりません。基本的にはサービスの品質をアップし、競合他社との差別化を図りながら、利用者から選んでもらえるサービスを整え、収入を上げていくしかないのですが、一足飛びに進むものでもありません。新規事業を実施する、事業を再編し収益効率の高い事業に重点化する、社会的収益事業を興す。地域のニーズや課題をしっかりと見極め、できることを実行していかなければなりません。むろん経費効率化はマストなので、ムダやムラで濡れている雑巾がないか探したりもします。
今回の改訂で大阪の最賃は964円(3%増)となります。連続する改定に翻弄されることなく、多面的な最賃議論を積み上げ、いずれは実質時給2000円時代を展望する経営基盤の確立が必要なのかもしれません。2021年の報酬見直しでは、ぜひともプラス改訂をお願いしつつ、もっと知恵を出し汗もかいて、働きやすいディーセントワークな職場環境づくりに邁進していくつもりです。ひいてはそれが、利用者の満足度向上や自己実現支援、地域住民の安心づくりとなり、法人価値の向上へとつながると信じているからです。それにしても、今回の改定に伴う対応業務は少なくないのですが、このコストは手当されません。縦割り行政の結果と言ってしまえばそれまでですが、時期をずらすなど、もう少し現場の臨場感を知ってもらいたいものです。暑い日が続くせいか、ちょっと愚痴になりました。