日頃、福祉でまちづくりを合言葉に様々な事業を進めていますが、その際に土地、建物等の物件確保に苦戦することが少なくありません。しかも、日本の人口減少は今後も続き、2040年をピークに要介護者人口も減っていくので、鉄筋の立派な建物を新設して物件を確保することには慎重で、なおさら選択肢が狭まるのです。そんなこともあって、私は、ここ数年、地域の空き家に注目してきました。
今、西成区では、総住宅数(約9万5千戸)のなんと約4分の1(約2万3千戸)が空き家です。東京都区部+政令都市の中で、大阪市の空き家率はトップで、その大阪市内では西成区の空き家率がトップ級なのです。さらに大阪市の2010年→2015年の人口変動をみると、減少数(1万人)、減少率(8%)とも西成区が1位、むろん単身世帯率も1位、寿命の短さは全国で1位というトリプル1位な実態を考えると、空き家問題は一過性ではなく、中長期にわたる深刻な課題と言えます。しかも西成区は、国が災害危険地区と指定した老朽狭小住宅密集市街地でもあり、そこで起こる大量の空き家問題は、単なる都市のスポンジ化問題を超えた喫緊に解決すべき都市行政課題です。「特定空き家」と呼ばれる崩壊寸前の老朽危険家屋もあり、周辺住民は日々不安と恐怖におののいていますが、一方で、多くの空き家は、リノベーション等の手を加えれば十分使用可能な貴重なまちづくり資源でもあります。
2014年の空き家特措法公布以降、大阪市の対策も強化され、6月末から「空家利活用改修補助事業」の2019年度募集が始まりました。「地域まちづくり活用型」の場合、最高300万円(耐震改修を含めると420万円)まで工事費用が助成されます。大阪市内では生野区や大正区等で先行した取り組みが進んでいるそうですが、西成区ではまだまだです。北区中崎町やがもよんのように古民家再生でおしゃれな飲食店や雑貨店を創るなどの芸当はできませんが、何とか私たちが西成区での空き家活用型まちづくりの端緒となれるよう「空き家で福祉のまちづくり」の計画を練ろうかと考えています。
高齢者の居場所はもちろんのこと、障害者の働く場、ひきこもりの人たちのカフェや釜ヶ崎食堂などいろんなアイデアが浮かびます。福祉以外にも、低家賃な地域安心公共住宅の整備や地元商店街の活性化は魅力的です。靴のまち再生はどうでしょう。子どもたちの学び場や外国人向けの日本語教室、音楽やサブカル等の文化発信拠点にも使えそうです。そのためにもまずは空き家バンクが必要でしょう。西成区役所あたりがバンクのまとめ役となり、空き家の登録促進をはじめ、所有者と事業者のマッチングなどを取り持ってくれれば助かります。空き家活用型まちづくりは、物件所有者にとっても、それを活用する事業者や利用者にとっても、そして、それらを通じて安心・安全の確保や賑わいを享受できる地域にとってもプラスで、言わば近江商人の三方よしそのもの。何とかキックオフしたいものです。