高齢社会の進展や単身世帯の増加等もあいまって、無縁社会の広がりは止まることを知りません。西成区は、総世帯に占める単身世帯率が32%で(大阪市15%)、高齢者世帯だけをみると、なんと68%が単身世帯なのです(市42%)。区内には87%が単身世帯という校区さえあります。一方、50歳時未婚率は約20%で、年々増加し続けており、無縁おひとり様社会は着実に進行しています。
こうした社会の変化は、葬送のあり方に大きな影響を与えます。従来の一般葬は減り、今、家族葬が急速に増え続けています。西成区ではいわゆる福祉葬が増加していますし、「無葬」もめずらしくありません。ゆかりの人たちが葬儀に参列できない「お別れ」が増えているのです。また、西成区の場合、単身世帯の中には釜ヶ崎との関係性をもってきた人たちが少なくありません。高度経済成長の中、様々な事情で家族やふるさとと縁が切れ、日本最大の日雇労働市場である釜ヶ崎を訪れる。以来、ドヤ等で起居しながら仕事を得て生涯を過ごしてきた人たちが高齢化し、今は病気を抱え、生活保護を受けながら天涯孤独な一人暮らしを続けている人もいます。日本が多死社会を迎える中、西成区が日本一短命の街であることを考えれば、ここ数年で葬送のあり方がさらに変化していくことは間違いないでしょう。
そんなこともあり、先日、関東にある社会福祉法人に視察に出かけました。この法人は、葬送を専業にする社会福祉法人で全国的にもたいへん珍しい存在です。少し専門的ですが、葬送は、社会福祉法における第一種社会福祉事業の中の助葬事業にあたり、身寄りのない生活困窮者等の葬送を福祉事業として行うものです(生活保護の葬祭扶助適用)。東京には創立100年という助葬事業の老舗社会福祉法人もあり、福祉と葬送には歴史的にも深い関係があることを思い知らされます。ちなみに視察先での最近の葬送は、さらにコンパクト化が進み、お通夜なし、初七日を前段の本葬に組み込む「ワンデー葬」が増えているそうです。法人職員さんは、ご遺体の運搬、葬儀の司会進行を務めることが福祉専門能力として評価されていて、改めて、福祉は生活であり、専門性の幅の広さや奥の深さに気づかされます。
私は、ぜひ西成でも助葬事業を構想し、お金も身寄りもない人が、人知れずお亡くなりなる状態を当たり前にしてはならないと思うのです。鍵は、葬送を個人(家族)の責任・役割から解放し、社会化・協同化することです。校区単位で合同葬を行い、地域立の合葬墓に納骨し、永代のつながりを創る。合葬墓は地方出身の多い西成の人たちの墓じまいの受け皿にもなるでしょう。最近、死後事務という何とも無情な言葉をよく聞きますが、助葬事業は弔う心や価値を見失わず、葬送の迎え方を手がかりに、人と人との豊かな関係を紡ぎ直す、そんな福祉でまちづくりの実践です。地元の隣保館やお寺さん、葬儀業者さんとも相談し、おひとり様社会の先駆地として新たな葬送の姿形を発信できればと思います。