福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

ひきこもるというSOS


 昨年12月に内閣府が行った「生活状況に関する調査」の結果が先月末に公表され、40~64歳人口で、ひきこもり状態にある人が全国で60万人を超えることが明らかとなりました。かねてより指摘されている若年層(15~39歳)のひきこもり数の54万人と合わせると、全国のひきこもり人口は少なくとも100万人を超えることになります。一般に、ひきこもりは若者の課題と捉えられていますが、今回の中高年の実態に加え、以前より高齢者にもひきこもり状態の人は少なくありません。むろんそれぞれに抱える課題は違うにせよ、ひきこもりは全世代に広がる深刻な社会問題と捉えるべきです。

 先日も古希を迎えた男性が、実は40代の息子がひきこもり状態。母親にどっぷり依存で困っているとカミングアウト。自身が定年を迎えたので、これからは息子と向き合ってみたい。そんな話をお伺いしたばかりなのですが、表面化しにくい身近な問題です。40歳未満では不登校、40歳以上では退職をきっかけにひきこもりになることが多い。7割弱が男性、8割弱が無職、5割弱は7年以上もひきこもり状態になっています。家庭内孤立や精神障害を併発しているケースも多数です。俗にいうゴミ屋敷問題や顕在化しにくい女性のひきこもり、8050問題ケースの中には老親への虐待、遺棄にまで発展する場合もあり、まさに、ひきこもる、はSOSの震源地です。ちなみに15~64歳のひきこもり出現率を西成区人口に当てはめると、区内には約1000人もひきこもりの人がいることになります。

 今回のひきこもり100万人問題の現実は、いま全国で進められている「若者サポートステーション事業」の失敗を示すものと酷評する方もおられます。失敗かどうかは別にしても、確かに現サポステ事業の就労自立を軸としたスキームだけでは収まらない実態が多いのは事実でしょう。私たちはいま、クリエバという拠点で発達障害者支援に力を入れていますが、ひきこもりのきっかけとなっている不登校や退職の背景に発達障害が深く関連している事例も多く、サポステ事業の教訓なども念頭に、今年度から本格的にひきこもり問題にアプローチしたいと準備しています。むろん長期戦必至となるでしょう。

 発達障害者支援以外にも、精神障害や生活困窮者支援の視点からもアプローチする必要があるし、教育・青少年政策との連携も不可欠です。さらに、全国的に取り組み可能なのは、地域包括支援センターの活用で、ここはSOSのキャッチ能力が高いと確信しています。包括支援センターは高齢者のよろず相談所。介護以外にも「実は、同居している子どものことが心配で‥」といった潜在ニーズがあるはずで、これを意識的に掘り起こすアプローチを進めるのです。支援の中身も就労自立とは違った、もっともっとスモールステップで多様性のあるサードプレイスが必要でしょう。失いかけた自信や自尊感情の再構築につながる、そんな魅力ある居場所づくりや家族カフェなんかから始めたいと思っています。