福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

シュールに想像してみた


 2020年東京オリ・パラの熱狂冷めやらぬ2021年の4月、大阪市南部エリアで(仮称)住西区のまちびらきが行われました。住西区は、市の総合区制度により住吉、住之江、西成の合区で生まれた新都市で、区南部を大和川が流れ、西部は大阪湾に面するウォーターフロントな街です。人口は市内最大の約39万人。住吉大社など歴史の魅力あふれるスポットがある一方、湾岸エリアには国際見本市会場を擁する未来都市でもあります。区長は市の局長級から選ばれ、職員数は1300人(市内最大)。区政発展のキーワードは「参加」と決まり、13名の市会議員が住西区から選出されています。

 住西区の最大の特徴は、高齢化率の高さです。65歳以上人口は約31%と市内8区で最も高く、高齢者単身と高齢者夫婦のみ世帯の合計は約30%で、これも8区トップ。しかも住西区北部に位置する西成地域自治区の高齢化率はすでに4割を超えています。また、高齢化のもう一つの特徴は、集合住宅団地における高齢化問題です。住西区には市営住宅をはじめ、たくさんの集合住宅があるのですが、高齢化等により、住宅清掃などの自治が成り立たない、共益費が集まらない、家に引きこもる高齢者が増加し、孤立死が後を絶たないと深刻です。生活保護率も8区トップで、113‰となっています。

 住西区のまちびらきと同時に発足したのが、住西区地域福祉推進協会です。新設された地域連携推進法人の大阪第一号で、住西区内に主たる事業所をもつ48の社会福祉法人で組織されました。福祉法人に義務づけられた地域公益取組を協働で行おうと結成された団体で、3つの区(?)社協が事務局を担っています。同協会では、集合住宅の高齢化問題が深刻であることを知って、「住宅福祉推進事業」を創設し、住宅集会所活用型福祉サービスを積極的に展開しています。お食事デイやお仕事デイ、リハビリデイや失語症デイのほか、認知症予防教室も行われています。集会所にはコミュニティ・ソーシャルワーカーも配置され、活発なアウトリーチが進められています。事業経費は、各福祉法人が拠出する資金ですが、各住宅の共益費の1部も充当されています。団地の高齢化が進み、デイ等の福祉サービスは居住者にとって、なくてはならない新たな共益として位置づけられるようになったのでしょう。

 日本で初の本格的な総合区制度を後押ししようと、国も税法を改正。納税者が市府民税の一部を、教育や環境問題など自分の関心のある分野に納めることができる「住民参加型予算制度」が創設されたのです。その結果、住西区では、やはり福祉に多くの税金が集まり、「福祉のまちづくり」や「福祉でまちづくり」という視点はしだいに影をひそめ、いつしか「福祉はまちづくり」になっていきました。ちなみに、2025年の大阪万博は実現できず、日本中にオリンピック不況が漂う中、住西区民をヒートアップさせているホットな話題は、「淀川を超えよう!大和川・冬の大花火大会」の成功なのでした。