盆明けだからというわけではありませんが、最近、葬送のことが気になっています。ひと昔前なら自宅で葬儀が一般的でしたが、最近、特に都心部では、ご遺体は、病院等からそのまま葬儀会館等に移送され、通夜・告別式が行われることが多くなっています。形式も、一般葬に加えて、家族葬が急速に増加しています。また最近は、直葬(葬儀なしで火葬場に行く)と呼ばれる無葬も増えていて、関東では直葬が全葬儀の22%という調査データもあります。ちなみに住職対象の経営講座も盛況のようです。
高齢社会の進展とは多死社会の到来を意味します。私たちが葬送をどう考え、どう向き合っていくのかは、とても大切なことだと思うのですが、議論が不十分なまま、すでにあちらこちらで変化が始まっています。その代表が火葬待ち問題です。今なら2~3日くらいですが、すでに一部では火葬まで10日待ちという地域があるようです。回転率をあげようと友引に火葬場を稼働させたり、火葬時間短縮のための設備投資が行われたりしていますが、根本的な解決策は見いだせていません。火葬待ちのご遺体を安置する「遺体ホテル」(1日9000円)が増え始め、「待機遺体」が次々に運び込まれて、稼働率は相当なものになっているようです。特養や保育所の待機問題は有名ですが、今後は火葬待機が社会問題化していきそうです。民間火葬場も増えてきているようですが、公立と同じ火葬料金では採算があわないので、ビップ室のプレミアム火葬などで上客を集めています。いわば火葬格差の始まりです。
お墓の問題も深刻です。にわかに献体が増えたり、電車内への骨壺の意図的な置き忘れなどもなくなりません。他人のお墓に勝手に納骨するケースもあるそうです。最近ではお墓を持っていない方や墓じまいをした人達の納骨をサポートする寺院も登場、遺骨を宅急便で届ける「送骨」が急増しているそうです。中には1万基の遺骨を納める立体駐車場のような自動搬送式納骨堂もあります。なんだか、死を弔う、慈しむというより、「忌避し、処理する」という時代に変容していっている気がします。
西成区は、もともと単身高齢者が多く、身寄りのない人が多い街です。しかも最近の生涯未婚率の増加を考えると、今後の多死社会における葬送のあり方が大きく変化することは必定です。今でも檀家関係がなくお墓を持っていないケースの場合、大阪では一心寺さんにお世話になったり、公的な合葬式墓地に入るケースも少なくありません。こうしたことを踏まえ、今私たちは、福祉法人としての合同葬の開催や地域立の合祀墓の確保の企画を始めました。縁あって同じ釜の飯を食べたサービス利用者はもちろん、地域で希望者があれば申込みを受け付け、合同葬を行い、合祀墓に納骨します。お彼岸には、サービス利用者等でツアーを組んでお墓参りに出かけ、みんなで故人を偲びます。人には死後の居場所も大切なんです。忌避、処理せず、地域で死をインクルーシブするサポート事業にしたいと思います。