いま、世界人口の3割強にあたる25億人以上の人々が、1日わずか2ドル50セント未満(約300円弱)で生活していると言われ、これらの人々の暮らしを支援しようとマイクロクレジット(少額融資)の取り組みが進められています。グラミン銀行が有名ですが、どちらかというとこれまでは、特定の限られた困窮地域における貧者の救済のようなニュアンスがありました。しかし近年は、先進国を含め、世界中に広がった貧困や格差を背景に、これらの困窮問題を一般的な金融サービスにアクセスできない金融市場から排除された状態だと捉え、支援するユニバーサルな視点での活動も始まっています。その名も、ファイナンシャル・インクルージョン。例えば、低賃金等で銀行融資など通常の金融制度が利用できず、一方では公的融資制度や生活保護の対象からも外される。こうした制度の狭間にある人々を金融排除層あるいは新しい金融サービスを必要としている人々と位置づけ、インクルーシブしていこうという活動です。取り組みは、融資にとどまらず、貯蓄、保険、教育など多岐にわたります。
日本における最近の金融サービス活動としては、生活困窮者等を対象に始まった家計相談支援事業がそれにあたるのかもしれません。古くは社協さんが進めている生活福祉資金貸付制度もありますし、民生委員さんの協力で行われている緊急援護資金事業もあります。他にも、大阪では府内の社会福祉法人が力を合わせて生活困窮者レスキュー事業(現物給付)を始めています。しかし、縦割りのバラバラ感はぬぐえず、まだまだニーズの補足率は低いまま。インクルーシブ機能は十分でないと感じます。
当法人においても、マイクロクレジットを軸とした地域密着型金融サービス事業を始めようかと考えています。実は、ずいぶん前に、第1種社会福祉事業にある無利子・低利の資金融通事業の実施について監督官庁に打診したことがあるのですが、「その規定は社協事業のことなので、それ以外は認可できません」と指導され、事業化議論がストップしていました。西成では、生活保護世帯(保護率24%)に多くみられる月末金欠病や、ひとり親世帯などで、子どもの入学・卒業、修学旅行等に起こるイベント時金欠問題なども山積しています。中には、資金をつなぐためにトニ(十二=年単利730%)の闇金に頼るケースもあるようです。ファイナンシャル・インクルージョンは、当法人ミッションであるソーシャル・インクルージョンの言わば金融編。借りたら返す、返してもらえるよう支援する、家計簿づくりなどの金融リテラシーを身に着けてもらう、既存金融制度をうまく活用する。財源は、話題の休眠口座を使わせてほしいと狙っています。生活用品共同購入などのやりくり支援、くらし共済等のリスクヘッジも組み込んだ総合的な金融福祉事業を構想する。前にも書きましたが、金の切れ目が縁の切れ目ならば、円で援をひろげ、縁をつなぎ直す、そんな新たな事業にできればいいなぁと思っています。