少し古い話ですが、昨年5月に成年後見制度の利用促進法が施行され、認知症の人や知的障害者、精神障害者の財産管理や各種契約時のサポート等の取り組みをさらに推進していく動きが広がりつつあります。成年後見などの権利支援システムは高齢社会のユニバーサルデザインだと思うのですが、2015年度の申立て件数は、全国でわずか3万5千弱。しかも、ここ数年は横ばい状態が続いています。
2000年に始まった成年後見制度は、それ以前の禁治産制度に比べると隔世の感があり、禁治産制度がもっていた差別性や制度に対する社会的偏見は多少弱まったような気がしています。しかし、まだまだ問題点も多く、特に2014年1月に日本が批准した障害者権利条約の観点からみると、本人(当事者)意思の尊重という基本の部分に大きな瑕疵が残されています。成年後見制度の法定後見には、後見、保佐、補助の3類型があるのですが、中でも、後見人と保佐人に与えられた代理や同意、取消権の執行において、本人意思の尊重が十分に担保されてないのです。これらの点も踏まえ、すでに日弁連は成年後見に代わる「意思決定支援制度」の創設を求める意見を表明されていますが、いずれにしても障害者権利条約批准に伴う国内対応として、数年のうちには成年後見制度の見直しが求められてきます。
さて現在、2017年度事業計画を検討中なのですが、新たに、成年後見制度の法人後見事業を始めようと準備に入っています。法人後見とは、私たちが組織(法人)として成年後見活動を行うもので、地域で後見サービスを必要とする人が放置されたりすることのないようにしたいのです。当然、本人意思の尊重や意思決定支援は事業の中心哲学に据えます。最近では、市民後見人の育成が進み、重要な戦力になりつつありますが、現段階では補足率すら不明なほどの需給ギャップがあり、組織的・戦略的な取り組みの必要性を痛感しているのです。ただ、法人後見は、利益相反等の問題で、当法人のサービス利用者の後見ができない規制があり、これをどうするかという課題があります。そこで検討しているのが民法の活用です。後見支援が必要な当法人のサービス利用者には、民法による財産管理委任契約や見守り委任契約を通じて支援を進めていくイメージです。また、他法人とのタスキ掛けも模索中です。
さらに重視したいのが、任意後見です。法定の場合、申立て人は、子、兄弟姉妹等の親族が圧倒的に多いのですが、任意後見は、判断能力がしっかりしているうちに自分で後見人を選び委任契約をあらかじめ結んでおく制度で、いわば申立て人は本人と言えます。弁護士や司法書士等を含め他薦の後見人による横領等の不正事件が増えている昨今、自薦なら、いざという時でも自分の信頼できる人からサポートを受けることができるので安心です。新事業の名称は未定ですが、将来は、身元保証やお葬式のお手伝い、お墓のお世話などを含めた総合的な地域隣保事業へと発展させたいなぁと目論んでいます。