福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

政治は逃げずに、骨太の改革を


 根強い潜在意見のようですが、あくまでもタラレバのお話です。現在、ひとり親世帯に支給されている児童扶養手当(月4万円強、18歳まで、年間予算約5300億円)について、経費削減のために、ひとり親となった原因により支給額に差をつけようという主張があります。例えば、死別離婚の場合、かわいそうだから今の1.2倍を支給する、生別は、養育費をもらうように努力してもらい半額に、未婚は、自己責任だからゼロ、という具合です。どう感じますか。私は思わずアホちゃう?と言いたくなるのですが、子の養育のための所得保障政策にひとり親となった原因はまったく関係ないのです。

 ひるがえって、障害者施策の場合はどうでしょうか。例えば、両下肢障害の例。出産時から下肢を失った、大学生の時に下肢を失った、70歳を過ぎて下肢を失った。どれも両下肢障害ですが、年齢が異なるため、対応施策は、児童、障害、介護保険とバラバラになっています。もちろん、年齢等の社会関係の違いにより特性があることは当然ですが、それ以前に、特に障害者支援と介護保険との間には不合理な格差が存在し、およそ公平・平等とは言いがたい多くの課題が存在しているのも事実です。

 私は、障害児から高齢障害者まで、ケアなどの生活支援に関しては、年齢によって施策をわけるべきでないと考えています。叶うなら、生涯を通じて一貫したサポートが受けられる地域生活支援法のような新法が必要だと思うのですが、現実的には困難です。善後策として、両法案を一方に統合させ、修正を加えるモデルを想定しています。方向としては、社会連帯で成り立つ介護保険に一本化する方が財政的な持続可能性も高くなると思います。先の「骨格提言」を含め、障害者支援の内容は、原則、そのまま介護保険に引き継ぎ、現行の自己負担は個人応能制に変更します。これにあわせ、被保険者と受給者は、今の40歳から20歳以上(健康保険と同様)に拡大し、制度を全世代対応型にするのです。

 来る2018年の介護と医療制度の同時改定をひかえ、今年、来年は改革論議が山場を迎えます。私は、2025年問題はもとより、人口減少が続く中、全世帯の約半数に65歳以上の人がいる時代に日本が入ったことや、介護保険が年10兆円、障害者支援財政が1兆円を突破して、今後も増加し続けるであろうこのタイミングだからこそ、被保険者と受給者の拡大を本格的に議論すべきだと思うのです。発足から16年、これまで4度の改正があった介護保険制度ですが、今の改革論議では、介護・医療の連携に名を借りた経費削減に終わるでしょう。そんな小手先では、これからの日本は立ち行かないし、年齢等にかかわらず、すべての人の自立と尊厳が享受される総合的で持続可能な社会づくりは不可能だと思います。昨今話題の地域包括ケアシステムを本質化するには、両法案の統合というもう一つのメッセージが内在していることを強く感じる今日この頃です。みなさまのご意見をお聞かせください。