阪神・淡路、東日本、直近では熊本・大分と、ここ20年、日本中が揺れています。いつも感じることは、地震自体は、どこにでも平等に起こりうる自然現象である一方、被害は不平等で、格差が存在するということです。私たちが活動している西成区は、国が定める老朽密集市街地で、中でも緊急の整備が必要なアクションエリアとして指定され、ひとたび大地震が発生すればひとたまりもない災害無防備地域なのです。不良住宅の解消等を目的とする大規模な住宅改良事業が今も2地区で行われていたり、最低生活居住水準未満の住宅は、全国が7%なのに対して西成区は37%と5倍以上も高く、解消の見通しすらありません。また、老朽狭小住宅問題に加え、道路も狭く、緊急車両はおろか、平時でもゴミ収集車すら入れず、70cmの雨傘が広げられない路地も多数です。政府の地震本部の見解で、むこう30年の間に70%の確率で発生するとされた南海トラフ地震(M8~9)のことを考えると、西成区にとって災害に強いまちづくりは焦眉の課題です。特に、住まいの安全確保は最重要課題でしょう。
私たちは、特養やサ高住などの施設経営を進めていますが、これはケア施設という一般的な側面に加え、住まいの安全確保を意図した防災型福祉ハウジング事業という特性をもっています。築古の文化住宅で、6畳一間、台所やトイレは共同、もちろん風呂はなし…。そうした住宅に暮らす高齢者等が要介護になれば、自宅にベッドやポータブルトイレなど持ち込むこともままならず、また、他室の人の迷惑になるからと共同トイレに手すりもつけられず、在宅ケアの実現は困難を極めます。そこで、住み替えを支援し、ケアとともに住まいの安全を提供しているのです。一次利用の居室も合わせると、これまでに法人が整備・確保したハウジングは全部で265戸(床)となりました。わずかですが、防災・減災につながる「公営」ならぬ民主導の「公益」防災福祉住宅だと確信していますし、ケア・住まい・防災の三兎を追い、個人と地域両方の安心を創り出すシナジー効果の高い「福祉でまちづくり」政策です。
が、これで安心というわけではありません。災害格差は地域のみならず、人にも表れるのです。今年3月末現在、高齢者、障害者等の法人サービスの利用登録者数は約2100人(年間述べ利用者は約31万人)ですが、まずはこの「災害弱者」の安全を確保するために、現行の災害時事業継続計画(BCP)を充実させつつ、計画的・実践的な防災訓練を行うなど、日頃の活動を強化していく必要があります。そして、いざという時には、地域の人たちからも頼られ、また逆に、近隣の人がこぞって助けに来てくれる、そんな「お互いさま」や「互助・共助」の関係性を創っていく「防災でまちづくり」の活動を強化することも、「地域立」社会福祉法人の本分です。火災や風水害への対応を含めて、災害時支え合いマップの作成や地域との合同防災訓練を企画するなど、果敢なチャレンジを続けたいと思います。