基礎学力と言えば、読み書きソロバン。もし存命なら88歳となる私の母は、この読み書きがほとんどできなかったので、いろんな苦労をしていたことを今も覚えています。仕事のためにと地域の読み書き教室に毎週通っていた姿を幼い頃から見てきた私は、その大切さがホントによくわかります。読み書きは、いわゆる国語力ですが、今、国際化、少子高齢化、情報化といった社会の大きな変化の中で、「考える、感じる、想像する、表す」力が求められるようになり、その発現行動として、国語教育の現場では、従来の「読み、書き」に加えて、新たに「聴く力」「話す力」が位置づけられているそうです。
さて、当法人は来月12月で設立20年を迎えます。また、2017年度の福祉法改正への対応もあり、最近、法人の歴史やこれからをツラツラと考える機会が増えています。そんな中、以前にも小欄でふれましたが、やはり職員の主体性の混沌は気がかりな難問の1つです。ある調査によると、「人が行動を起こす時」というのは、「自分でもできると思えた」「周囲から期待された」「上司から指示された」時よりも、「自分でやりたいと思った」「必要性が高いと思えた」「重要度が高いと感じた」時であり、給与・処遇等の衛生要因も期待するほど有意性はないとのこと。そして、この「やりたい、必要だ、重要だ」などの主体性をうまく引き出すリーダーシップには、共通点があるというのです。
それは「組織のビジョンを魅力的に語る」「日常でもビジョンの話を持ち出している」「従来にこだわらず、新しいやり方を取り入れている」といったもので、しかも一方的な語りではなく、常に対話、特に「冗長性の高い対話」を通じてビジョンを伝えていくことが、主体性の感度を効果的に上げているというのです。つまり、一人一人が主体的に輝く組織をつくるリーダーシップには、新しい国語力と同じ、人の話を「聴く力」、ビジョンを「話す力」が重要だということです。読み書きは文字言語、聴く話すは音声言語。プレゼンのTEDのように、多面的な言語を駆使してリーダーシップを発揮する時代が来ているのでしょう。聴くことは得意だが話すのは苦手な人。話すことは得意だが人の話はあまり聴かない人。人には得手不得手があります。
が、朗報です。この「読む、書く、聴く、話す」の力をうまく身に着けるいい方法があるそうです。そう、読書です。なので、私は月2冊、当法人のリーダー的立場の人には、月1冊の読書習慣をつけてもらえないかと、密かに作戦を練っているところです。
そして、この駄文が読まれる頃には、大阪府・市の新たな首長が決まっているかもしれません。現時点で、どちらに軍配が上がっているかはわかりませんが、新しい地方自治を創るスキームが、総合区であっても特別区であっても、西成区を担当する新しいリーダーは、無類の読書好きで、冗長対話で住民の主体性を引き出し、共感で協働を創りあげるセンスと覚悟をもっていてほしいなぁと願っています。