福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

オーナーは、全職員


 いま当法人では、クレド(信条)を盛り込んだ新しい中期経営計画策定の議論しているのですが、先日、職員の資質低下のことが話題になりました。その資質は「アカウンタビリティ」と呼ばれ、福祉分野だけでなく、どんな所に属していても必要で、私は、管理・監督的立場にある人なら必須要件だとさえ思っています。心理学の理論を企業経営に応用したもので、ピーター・センゲらが提唱する「学習する組織」「自ら変化し続ける組織」の核心部分にも通貫します。もちろんこの資質は、天性の素養などではなく、スキル、すなわち、修練して身につけられる思考、行動、態度のこと。しかも、仕事の場面だけでなく、夫婦や親子関係などの生活場面にも効果を発揮する優れもののソーシャル・スキルです。

 アカウンタビリティとは「今の状況は、自分が招いた結果だという視点を意識的にもつ」という意味で、あえて訳せば主体性、感覚的にはオーナーシップ精神に似ています。「今の状況」には、つい怒りたくなる問題や、何とも情けない出来事もありますが、それらをひっくるめて自分の責任、自分の力不足が招いた結果だと捉えるのです。そう捉えることによって初めて課題解決の出発点に立てるんだという示唆なのです。アカウンタビリティは、組織ミッションに対する共感度やその実現を願う気持ちの強さと相関します。なので、ミッションと自分の目標を一致させることころが大きなポイントです。

 アカウンタビリティが低い例としては、今の窮状を他人のせいにする、自分の責任に気付かないふりをする、自分には落ち度がないと決め込む、すぐに無理だと言い張る、いつも様子をみる、すぐに開き直る、言い逃れをする、などがあげられます。どうでしょう、あなたの周りにこのような人はいませんか。もしそれが上司なら部下は誰もついていかないでしょう。組織には感情があると言われますが、こんなことが横行している組織はきっと「ギスギス」「ヒエヒエ」の感情が渦巻いているでしょう。

 今国会で福祉法人制度の改革法案が成立する見通しです。この中で、法人役員の責任、権限、役割が議論されています。例えば、問題ありの役員には注意善管義務違反を適用する規定などが盛り込まれていくようですが、ちょうどいい機会なので、アカウンタビリティを総点検するくらいの厳しさがあってもいいと感じている今日この頃です。自戒も込めて、組織の中で管理・監督的立場にある者は、これを機にアカウンタビリティの向上に積極的に取り組むべきで、そうした地道で日常的な活動が社会から信頼される福祉法人の基礎をつくり、部下からの信頼を増やし、組織に「イキイキ」感情を創りだすのでしょう。職員の資質低下は上司の責任。以前にも書きましたが、「部下は上司の鏡」なのです。企業経営は「ヒト、モノ、カネ」ですが、福祉は「ヒト、ヒト、ヒト」。ヒトがブランドになるのです。福祉が市場化し、福祉労働がサラリーマン化する今だからこそ、今度のクレドに盛りこみたいと思います。