毎年500億円とも言われる日本の休眠口座。社会問題の解決に活用するための法案づくりがいま、国で立ち往生しています。で、今回はお金のお話。数年前、イタリアにある「バンカ・ポポラーレ・エティカ(倫理人民銀行)」を視察する機会がありました。銀行なので融資業務をされているのですが、これが個性的なのです。まずは、預金者を組合員と位置づけ、融資対象を社会的な目的をもつ組織に絞り、融資先を公表していること。2つ目は、審査方法。事業内容等の審査を組合員の地域代表が行い、返済能力等の経済審査を銀行が行います。3つ目は、預金システム。組合員は、福祉とか環境とか希望の融資分野を指定でき、銀行が決めた上限以下なら自分で利息が決められます。いわば社会貢献型預金とも言え、例えば、預金する組合員が「利息はいらない」と言えば、融資をうける側は低利子で済むので助かります。銀行は、イタリア国内に10支店、組合員数は26000人(団体含む)で、融資実績は7年間で5000件(当時)。しかも、一般の銀行よりデフォルト率は低いところがまたスゴイ。
一方、日本にもチャレンジャーな銀行があることを最近知りました。岐阜県に基盤を置く地銀で、自行を「地域に貢献するサービス業」と位置づけて、コンビニ併設銀行、移動店舗やドライブスルー型ATMの展開、最近ではスマホ通帳の扱いも‥。特に私が驚いたのは、社会的なローン商品のラインナップです。シングルマザー応援ローン、不妊治療応援ローンや離婚後の生活の再スタートを応援するローンなどもあり、金利は高めですが、本業で社会問題の解決に貢献するCSV(共通価値の創造)の好事例と言われています。また、いま話題の社会的インパクト投資にもますます注目が集まっています。
ひるがえって、労働運動や人権運動など分野にある独自の金融組織は、いまどんな活動をされておられるのでしょうか。バンカ・エティカのように、世のため人のためになるような役割を担っているのでしょうか。福祉の世界にも「無利子又は低利子で資金を融通する事業」があり、全国的に社協さんが担っておられますが、今日の格差・貧困実態を踏まえると事業転換が必要だと感じます。「赤い羽根」もしかりです。今年度から生活困窮者支援として家計支援事業が始まりました。失業や貧困は、いつでも誰にでも起こりうる時代に変わったという認識が必要で、例えば、現物支を含めた「ワーキングプア支援ファンド」など、私たちも社会的金融事業を本気で始める時がきている気がします。むろん金融は門外漢なので、専門機関との協働や関連人材を確保するなど必要な体制を整えながら、返済(就労)支援を含む「金融福祉」に挑戦するのです。「カネの切れ目がエンの切れ目」と言われますが、「円」で「援」をつなぎ、「援」で「縁」をつなぎ直すのです。世の中、たかがカネですが、されどカネです。1日も早く、「休眠」口座が「窮民」のための「救民」財源になればと強く願っている暑い夏です。