無事、入札を終え、仮称・ヒューマン発達障害者支援センター(延床820㎡)の建設工事が始まります。今秋に開設予定で、法人ミッション実現への思いがたくさん詰まった利用者開発型新規事業です。
空気が読めない、人の気持ちを推し量れない、相手の言わんとする言葉の意図が類推できない、こだわりが強い、臨機応変が苦手、仕事の段取りや時間管理が下手、片づけができない、大切なことを忘れる、予定外の出来事が起こると混乱する、一方的に話す、衝動的な行動をとる、などの特性は、多かれ少なかれ、誰にでもありますが、こうした傾向が特に顕著で頻度も高く、日常生活や仕事等に大きな支障を与えてしまうといった場合に発達障害と診断されサポートを受けます。ここ数年、国際的な診断基準が緩くなったこともあり、「つくられる発達障害」が増加していることには注意が必要です。
また、発達障害は本人の努力不足や親のしつけとは全く無関係な、もって生まれた特性であり、治療で治るというものでもありません。また、知的障害や精神障害を併せ持つ人もいます。最近では、発達障害に気づかない大人たちの存在が話題になっていますが、こうした本人の気づきはもとより、周囲の理解や協力等の環境・度合いにより、生きづらさの多寡は明らかに違います。一方、発達障害をもちながら、内在する強烈な個性や、脳の強いアンバランスさがストロングポイントとなって活かされ、成功を収めている芸術家や学者、文化人やタレントなどの著名人も多数いると言われています。
同センターでは、子どもから大人まで、現代社会に生きづらさを感じている当事者のサポートをはじめ、その保護者や家族などの身近な人々の支援と、ご近所や学校、職場における理解と協力の促進といった地域社会づくりを柱に事業を構想し、現在、フィージビリティスタディーを進めています。特に、地域社会づくりは当法人の創業精神でもある「福祉でまちづくり」の具体的実践テーマです。まちづくりとは、単なる箱ものではなく、人づくりであること。人づくりとは、人と人との豊かな関係を構築するということ。そして、豊かな関係とは、個人の尊厳を大切に、お互いが高め合える関係を創っていくということです。「発達障害者支援×福祉でまちづくり=ダイバーシティ社会の創造」。そんなイメージです。ダイバーシティとは、女性、障害、高齢などの多様性を縦糸にして、空気が読めない、こだわりが強いなどの特性を、多様性の横糸として位置づけた人権社会を創ろうという提案です。
俗にいう「変な子」「困った人」は、これからも存在し続けます。センターの活動が、進む過度な競争・排除社会への警鐘となり、加速する不寛容な時代に決別したいのです。障害者差別解消法等とも相まって、戦後70年の今だからこそコミットしたいイノベーション事業だと確信し、すべての人の居場所と出番を創造する寛容と包摂の社会づくりへのチャレンジを決意した新年の幕開けとなりました。