先日、地域公益活動のあり方を考える福祉法人セミナーに参加しました。地域公益活動は来年度からすべての社会福祉法人に義務化される予定ですが、現時点では「公益」の捉え方すらバラバラで、活動の具体化へむけては玉石混交の気配が満載です。そんな中、セミナーでは、貧困問題などの取材を続けておられるNHKのディレクターさんが発議。福祉法人制度では会計上も社会福祉事業と公益事業が区分されていることなどを念頭に、「福祉は門外漢ですが…」と断りながら「社会福祉事業は公益事業ではないのですか」と率直な違和感を示し、「福祉法人の皆さんは、そもそも公益をどのように捉えておられるのですか」と問題提起されました。それに対してコーディネーターが「解釈はいろいろあるが」
としながらも「公益とは私的分配を行わないこと」であり「少なくとも財政上はそう扱われている」とコメント。思わず「?」とドン引きした私ですが、続くディレクターさんの主張が明快でした。
公益とは一般に「公共の利益」と説明されていますが、自身が厳しい貧困・格差・孤立現場の取材等を通じてたどり着いた解は、公共の利益とは、単なる「みんなの利益」ではなく、「困っている人を、みんなで支えることを利益とする社会のこと」だと。そのためには、そうした人と人との豊かな関係を実感できる社会関係資本を創ることが大切で、それを下支えするのが現代の福祉法人の存在意義ではないかと。何ともシャープでセンスがいい。法律によるいわゆる制度福祉に埋没し、官が放置し民が無視している多くの福祉課題解決に、公たる福祉法人が役割を果たさない無頓着への痛烈な警鐘でした。
今後、福祉法人はいわゆる余裕財産をベースにした「再投下(地域公益活動)計画」を所轄庁に提出し、審査・承認を受け、公益活動を始めなければなりません。法人の自主性が尊重されるので、せめて公益に対する認識をしっかりとさせておくことは重要です。でないと、単なる施設の場所貸しや近隣の清掃、お祭りへの寄付などが公益だと矮小化されてしまいます。指導・監督権を持つ行政の役割も重要です。公益活動を競わせるなど、この流れを好機として活かせるかどうかが腕の見せ所でしょう。
私たちも、改めて地域公益活動計画を議論しています。センスのいい計画を作りたいと考えていますが、地域ニーズを基本に、法人ミッションであるソーシャル・インクルージョンとエンパワーメント、創業精神の「福祉でまちづくり」の視点を踏まえ、いくつかのキーワードを思い浮かべています。「居場所と出番」「互助と互酬」「先駆性と汎用性」「雇用とCSV」「上乗せと横だし」「持続可能性とクラウドファンディング」…。ビジネスでは「WIN-WIN」が大切と言われますが、公益活動や福祉では「HAPPY-HAPPY」と考えた方がおさまりがいい。来年は法人設立20年の羊年。羊頭狗肉や虎皮羊質とならないよう、トライアル&エラーの精神でチャレンジしていきたいと思います。