福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

サ高住「パークコート」のチャレンジ


 サービス付き高齢者住宅、いわゆる「サ高住」が増加しています。特に大阪では増加率が高く、大手住宅メーカーもこぞって参入し、あの手この手の入居者確保競争が激化しています。当法人も「支援が必要な人が住まいを選べるまちづくり」をコンセプトに、2011年4月、夫婦向け含む22室のサ高住「アイビスコート」を開設しました。24時間365日型のホームヘルプ事業に加え、特養やグループホームなど要介護者向けをすでに整備・開設していたこともあって、アイビスコートは、メザニン、いわゆる虚弱単身高齢者をメインの利用者としてターゲティングし、現在は満室になっています。

 そして来年、新たに33室のサ高住「パークコート」を開設することになりました。今回は、当法人が建物の店子としてサブリース契約を結ぶ形で物件を確保しました。本来なら住み慣れたご自宅での在宅生活を支えることが当法人の本意ですが、6畳一間、共同トイレ・台所といった老朽狭小住宅が密集する西成では、要介護生活に必要なベッドやポータブルトイレすら置けないこともあり、在宅生活の維持は困難を極めます。特に今回のメインターゲットは、来年から特養に入れなくなる予定の要介護2以下の高齢者とし、その受け皿的な役割も担います。また、従前からの定期訪問はもとより、24時間365日の随時対応も行う訪問介護・看護事業も併用します。この事業は、今話題の地域包括ケアを象徴する特養のプロセスイノベーション事業で、大阪市内では4ヶ所でしか実施されていないチャレンジングな事業です。自宅にいながら特養並みのサービスが保険費用内で受けられるというコンセプトです。

 もうひとつのチャレンジは、家賃設計です。具体的には公営住宅で適用されている応能応益家賃制度を今回の民間賃貸住宅でも適用できないかを議論しています。応能とは所得に応じて、応益とは住宅から受ける便益に応じてという意味です。今回は応益性が同じなので応能家賃が作用します。西成区では公営住宅が全住戸の約1/3を占め、多くの住民が応能応益家賃を支払っています。また、特養でも施設に支払う家賃(ホテルコスト)は4段階の応能制となっていることも踏まえたチャレンジになります。

 ただ、RCの新築住宅、西成区は高齢者の生活保護率が5割を超えるなど、応能家賃の設計には工夫が必要です。もちろんオーナーに支払うリース費用が賄えることなど持続性が大前提となるので、ルームコントロールをはじめ民間事業者としての手腕が試されます。低所得者が多いのですが、地域には多様な所得階層の人がおられます。そうした人たちの定住支援に向けて、地域立・住民立の社会福祉法人が「地域密着型サ高住」を経営するにあたって、家賃設計に多様性を盛り込むのは1つの帰結だとも思います。「住宅確保は個人の甲斐性」が常識の日本。公的住宅政策は皆無に近いと国際的に酷評されていますが、今回の事業モデルが世界の非常識に小さな一石を投じることになればなぁと夢見ています。