福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

なぜ”ヒューマンライツ福祉協会”か


 来年12月、当法人が設立20年を迎えることもあり、やや早めですが、昔のことをツラツラと思い出す機会が増えました。今号は、その中から法人名命名の由来について書いてみたいと思います。

 改めて、当法人の名称は「ヒューマンライツ福祉協会」です。ヒューマンライツは文字通り「人権」なので、和製では「人権福祉協会」となります。福祉になぜ人権を充てたのか。それは、そもそも当法人が部落解放運動という人権運動の一環として設立されたいきさつがあり、福祉の本質は人権だと考えているからです。「差別をなくすことが福祉です」をコアのアワークレドとし、命名にあたっては「差別をなくす」を「人権を創る」に置き換え、ちょっと気取ってカタカナにしたのです。

 ヒューマンライツには3つの視点があります。1つは、最低生活や生存権の保障。憲法でいう25条です。2つ目は、個人の尊厳や幸福追求権。憲法13条です。3つ目は、法の下の平等や差別されない権利。憲法では14条です。一般に、社会福祉法人は憲法25条に関連する公益法人に分類されるのですが、私たちは、これに13条と14条を加えて、これらを三位一体、不可分のものと価値づけているのです。「人権のための福祉」「福祉を通じた人権」「福祉という人権」のメッセージです。

 法人の設立時には、さまざまな行政指導を受けるのですが、名称については「社会福祉法人○○会」に統一してほしい旨の指導が陰に陽に行われました。言うことを聞かないと「認可に影響するよ」みたいな雰囲気があったことを覚えています。「○○には、漢字2~3文字程度を使い、後ろには”会”をつけるように」と。しかし私たちは、○○にヒューマンライツを充て、「会」ではなく「福祉協会」にすると譲りませんでした。「協会」には、福祉と人権を「みんなで」「協力して」実現していこうという「参加と協働」の想いを込めたのです。「やってあげる、やってもらう」ではなく、福祉は「やっていこう」の精神が未来指向だし、持続可能性を担保するのだと先輩から教えられてきたからです。

 こうして「ヒューマンライツ福祉協会」の名が誕生するのですが、まさに経営理念をそのまま表現した名称です。ちなみに、定款を作成する時も、法人設立の手引きに書かれたひな形文や行政の指導基準を超えて、第1条の設立目的に「地域福祉の推進」という文言を盛り込みました。これも「指導」を受けましたが、地域に対する私たちの想いを何とかご理解いただきました。以後、「福祉でまちづくり」や法人特性を「地域立・市民立」と言ってきたのもこの流れの中にあります。あれから20年、「名は体を表す」と言いたいところですが、まだまだです。福祉と人権のプレイヤーとして、「言うは易し、行うは難し」をいつも痛感させられています。でも改めて「行う」を起点に、初志貫徹です。気を引き締め、これからも創業の精神と法人ミッションの実現に挑み続ける組織でありたいと願っています。