「大阪、4月から銭湯値上げ」の新聞報道(3/6)を見て、背筋がビッとなり、ずいぶん昔から気になっていたことを思い出しました。燃料高に加え消費税増税が銭湯経営を苦境に追い詰め、見かねた浴場審議会が値上げを判断したのでしょう。そう、銭湯はその多くが家族経営の民間事業者なんですが、料金は今も価格統制下に置かれ、公的に決められているのです。確か、立地制限もあったと思います。やや込み入った話ですが、値上げ額は、12歳以上の大人の場合30円で、新料金は440円となり、小学生は20円値上げで、150円となるようです。小学生未満は60円に据え置かれました。
全国的に銭湯は都市部に集中しています。府浴場組合HPによると、西成区内の銭湯数は35ヶ所となっており、大阪でも群を抜いて多い地域です。それもそのはずで、西成区は、国が指定する老朽密集市街地で、老朽狭小木造住宅がひしめき合い、今も共同トイレ・台所が少なくなく、自家風呂普及率がたいへん低いのです。ちなみに、私自身は自家風呂ですが、今も銭湯の利用歴のほうが長いくらいです。
さて、値上げ記事で思い出したことは、自家風呂の世帯も銭湯を利用する世帯も生活保護費が同額だという矛盾です。ご承知のように、西成区は生活保護世帯が日本一多い街です。多くは高齢者世帯ですが、働きながら生活保護を利用するひとり親世帯等も少なくありません。自家風呂のない世帯にとって銭湯は生活衛生を保つ重要な社会資源であり、レジャー型のスーパー銭湯とは意味が違います。一方、老朽密集市街地における銭湯は、極めて公益性の高い公共施設ともいうべき重要な存在です。
例えば、小学生の子どもが2人いるひとり親世帯を例にとると、値上げは1日70円となります。仮に毎日銭湯に通うと月2,100円増え、銭湯代は月額22,200円にもなるのです。確かに、自家風呂にも諸経費がかかりますが、いろいろ考慮しても月22,200円ものコストがかかるでしょうか。もしそうでないなら、銭湯を利用する被保護世帯と自家風呂の世帯とでは、保護費の金額は同じでもその価値が実質的に違うことになり不公平です。ちなみに高齢夫婦世帯なら月額26,400円の出費となります。
今、多くの銭湯が廃業の危機に追い込まれています。なので、値上げは仕方のないことなのでしょう。銭湯を利用する住民は、行きつけが廃業になれば遠くの銭湯まで通わなければなりません。今の季節なら、湯冷めどころか帰りに風邪をひいてしまいます。これまで私が考えてきた処方箋は、1つは生活保護制度に銭湯加算を設けること。もう1つは老朽密集市街地内にある銭湯に対しては、経営を支える支援施策を新たに創設することです。どうでしょうか。昨夏から生活保護費はカットされ、一方でこの4月から消費税は上がる。その上に銭湯代も値上げとなると、かなりキツイのです。当法人に何かできることはないか。別名「お風呂組合」と呼ばれる「西成くらし組合」との協働も模索してみたいと思います。