福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

生活保護改革で保護世帯が増える!?


 総選挙が終わり、自民中心の連立政権復活となりました。国難の中、どんな政治が進められていくのかに大きな関心をもっていますが、政権がかわっても避けて通れない日本の最重要課題の一つが社会保障問題。この中でいま生活保護制度の改革も議論されているのですが、これがやっかいなのです。

 後発医薬品使用義務化などの医療扶助の見直し、資産調査の強化、就労収入積立制度の導入など、改革のポイントはさまざまですが、中でも生計費の中心となる生活扶助費の削減問題は西成にとってヘビー級のテーマ。しかも、将来の話ではなく、来年度予算編成に合わせた議論になっています。進め方も、生活保護費の不正受給問題を執拗に取り上げ、格差や貧困に苦しむ世論の反感をあおりながら合意形成を図るというクレバーぶり。このこともあって、ネットの世界では生活保護のことを「ナマポ」と揶揄し、今年の裏流行語大賞受賞との評判。何とも情けない。

 この生活扶助費、削減されたらどうなるか。月々の保護費が減る。これは当然なのですが、この改革がヘビー級なのは、生活保護を利用していない世帯にも多大な影響を及ぼすからなのです。まるで「風吹けば桶屋が儲かる」式で、いくつか代表的な例をご紹介しましょう。公営住宅家賃や保育料の負担増加、就学援助費を利用できない子育て世帯増加、高額療養費負担の増加、介護保険の保険料や利用料の値上げ、障害者支援サービスの利用料値上げ、働いた時の最低賃金の基準低下…。ウソみたいですが、全部ホントの話です。なぜなら、これらの支援制度は、直接、間接に生活扶助基準を元に運用されているからです。生活保護制度の生活扶助基準は、こうした支援制度の基準やグレードを決めているセンターピンなのです。

 全国で155万世帯、213万人。西成区だと保護世帯率は直近で34.3%だから、区民の約3世帯に1世帯が影響を受けます。加えて、生活保護を利用せずに各種の支援制度などを利用しながらギリギリの生活を送っている多くの区民も影響を受けるので、西成区は壊滅的なダメージを受けます。支援制度が利用できないことで、逆に生活保護世帯が増えるかもしれません。生活保護半減を掲げた新しい区長さんもビックリです。国は不正受給がけしからんと生活扶助削減への世論誘導をしていますが、どうか、ここはみなさん冷静に。不正受給はけしからんですが、生活扶助費の削減はもっとけしからんのです。

 この改革、もともとはこの12月にも決定という流れでしたが、解散・総選挙で結論は年明けに持ち越し。首の皮一枚でつながっている状態ですが、自民党は「保護費8000億円削減」を政策に掲げています。難易度は高いですが、逆風を乗り越え、国をして「ギブ」と言わしめるほど、改革停止への強烈なプレッシャーを西成から発信し、貧困のさらなる拡大に歯止めをかける必要性を痛感しています。年の瀬にネガティブな話題となりました。でも世の中は厳しい。それが現実。良いお年を。