福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

IT時代へ、一歩前進!?

 当法人では、2016年3月にプライバシーマーク(Pマーク)の認証を取得し、個人情報の管理を進めています。後から聞いて驚いたのは、Pマーク取得事業所は全国で約16000件あるのですが、そのうち社会福祉法人はわずか13件。大阪府内はもとより関西圏域の社会福祉法人でPマークを取得しているところは、当法人のみということ。全国には約2万の社会福祉法人があり、それぞれに個人情報の適正な管理が必要なはずだと思うのですが認証はあまり進んでいないようです。私は、Pマーク認証申請の段階から、自己情報コントロール権ともいうべき考え方を基盤にしたルールを作るよう担当者にお願いをしてきました。そもそも個人情報は当該個人のものであり、その取扱い権限は、あくまで個人の側にあることを明確にしておかないと、情報が悪用され管理がずさんになると感じたからです。

 最近、大規模災害時における要援護者支援をめぐって個人情報の扱いが課題になることが少なくありません。公的機関は、いくら災害でも個人情報は保護されるべきなので、災害弱者であっても情報は出せないと頑な。結果、的確な情報収集・管理・活用ができず、救えたはずの尊い命が失われていくという本末転倒が続いていく。災害時に個人が自己情報の活用を望むなら積極対応は当然で、自己情報コントール権を踏まえ、本人同意を通じて要援護者名簿を作成するなど、さまざまな工夫でいざという時に備える必要があると思うでのす。OECDの8原則にも「個人参加の原則」が謳われ、国内法においても個人情報取扱事業者に義務付けされている当然のルールなのですが、実際は空文化しています。

 そんな中、先月末、国の個人情報保護委員会が、企業等が保有する個人情報の利用停止等を請求する権利を個人に付与し、企業側は原則としてこれに応じなければならない旨の検討を行うとした「中間整理」を公表。今後、パブコメを経て、来年の通常国会に提案していく方針が示されました。ようやくという感じです。表現は違いますがいわば自己情報コントロール権の部分制度化ともいうべき前進です。全体的に今回の中間整理には不十分点もありますが、一歩前進というポジティブ思考で見ています。

 GAFAと呼ばれるプラットフォーマーへの規制に示される通り、個人情報を制するものが時代を制するとまで言わしめるIT時代が到来しています。今まさにデジタル・タトゥという特性を理解しなければ個人情報はズタズタにされ、平穏な生活が脅かされかねない渦中にいることを、私たちはもっともっと自覚する必要があります。特に社会福祉関係者が扱う個人情報は高度にセンシティブであり、その適正管理は当然のことであり、サービスの品質そのものと解すべきでしょう。加えて、当法人の利用者には、国籍や門地等に係る情報で苦労を重ねてこられた方々も多く、そんなことも念頭に置きながら、Pマーク認証により一層の磨きをかけ、進化するIT時代に向き合っていきたいと思います。