福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

安心を、みんなで買おう!

 今月、公益社団法人認知症の人と家族の会の全国事務局長をお招きし、学習会を行いました。支援のイロハから自立概念の理解など多くを学ぶことができました。特に、私たちの問題意識の1つは、外出時における事故リスクへの対応でした。行方不明で警察に届けられる認知症の人の数が年間1万人を超える中、時には認知症の人が他者に損害を与えてしまう事案も少なくなく、ご本人はもとよりご家族の心配は絶えません。JR東海の列車事故で、家族の損害賠償責任が問われた事案に対する2016年の最高裁判決は記憶に新しいところですが、本件ではご家族の損害賠償責任は回避されました。しかし、判決で示された監督義務に関する3つの判断基準に照らせば、今後は、同居で元気に認知症の人を介護している人ほど監督責任が認定され、損害賠償責任が課せられるケースが増えていくことになります。
 もしもの時の認知症の人とご家族の安心確保と被害者救済はいかにあるべきか。車の自賠責保険のように、本来なら、全国共通の公的な補償制度の創設がベストなのですが、具体的な議論はなされていません。一時は、月々の介護保険料に数円上乗せすれば、損害賠償の財源は確保できるという試算が行われ、制度化へのアイデアが出されていましたが、議論はたち切れになっています。一方、自治体単独での取り組みは徐々に広がっていて、私たちが調べた範囲でも7つの市で認知症の人の損害賠償をサポートする公的支援制度が創設されています。多くは民間保険を活用するタイプで、保険料の一部(全部)を税金で補てんし、損害が発生した際のリスクを支えるものになっています。近隣では、神戸市が条例を制定し、来年4月から救済制度を始める予定ですが、残念ながら大阪の情報は入っていません。
 そこで、という訳でもありませんが、私たちは、新たに(仮称)認知症支援地域共済ファンドを組成し、その運用益で保険料の一部を応援する仕組みの創設を考え始めています。これも民間保険を活用して安心を買うイメージですが、西成区には貧困な世帯が多いので、制度を機能させるためには、保険料の負担(月1300円)を軽くする仕組みが必要です。ファンド総額は4億円で、個人・団体・企業から募りたいと考えています。運用益を活用するので元本は保全します。お願いする団体・企業は、損害を受けるかもしれない業態のところにも声をかけていきたいと考えています。この制度によって、およそ150人の認知症の人やそのご家族の安心が担保され、被害にあわれた側にも最大1億円の損害賠償が可能となります。さらに、この保険には行方不明時の捜索費用の補償もあるので、日常的な安心も得られます。制度の対象をどうするか、自己負担はゼロかなど、整理すべき課題はありますが、昨年9月に発足した「西成区認知症の人と家族の会」への加入と同会の活動への積極参加は、サポートを受けるための最低条件として義務付けたいと考えています。最難関はファンドレイジングです。